14日から18日までの5日間、三条東公民館で開かれている三条市若手芸術家支援事業「阿部嘉美書展−ふるさととともに」で15日、三条市の書家で日展会友の阿部嘉美(本名・よしみ)さんによる席上揮毫(きごう)が行われた。
約70人の見学者が見守るなか、黒の上下の阿部さんは床に紺の下敷きを広げ、2枚の紙に「鳶飛」と「魚躍」、続いて1枚の紙に「鳳飛龍騰」と大字を書くパフォーマンスを披露した。
筆運びがわかりやすいように、ふだんより筆を速く動かしたと阿部さん。筆を動かす合間にも何を意識し、どう考えて書いているかを説明し、ただ見せるだけではなく、見学者を強く意識して実演しながら講演するようなスタイルで進めた。
「基本的に勢いより一本の線のできあがりを意識しながら書く」、「気持ちが焦らないようにあえて休憩をはさんで書く」、また、筆順は絶対と思われがちだが、「バランスをとるためにあえて書き順を変えることがある」とも。
公募展では紙にびっしりと文字を書いた細字を出展するが、行が曲がらないように1ミリの単位の精度で針で穴を開けて目打ちしてある。得意の金紙いた書は、途中で気に入らなければ雑巾でふいて消して書くこともある。夏は窓を閉め切ってエアコンをかけ、紙を汚さないように長袖で作業しているといった創作の裏側も紹介した。
作品の印象からか,阿部さんを男性と思っていた人が多く、阿部さんの筆先から生み出される力強い文字が生まれるようすを息を殺して見学。質問も多かった。紙に対するこだわりを問われると、「字がだめだったらどんないい紙でもだめ」で、紙にはあまりこだわらない。書いているときの視界は「書いている文字に目を近づけるより上を見ながらバランスをとっている」などと明かし、見学者は「やっぱりうまい人は考え方から全然、違う」と感心していた。