7日から15日まで新潟市西蒲区・岩室温泉の旅館に武蔵野美術大学(甲田洋二学長・東京都小平市)の卒業制作作品を展示して開かれた「アートサイト岩室温泉2015」。その運営を任された武蔵美の学生スタッフが17日、帰京した。
学生スタッフは芸術文化学科の1年生から3年生まで18人。開幕2日前の5日に岩室に入り、展示した卒業制作作品を制作した学生と一緒に展示作業を行った。開幕してからは関連イベントを含めて運営にあたった。
15日に閉幕すると今度は片付け。教授らは一足早く16日朝に帰り、学生スタッフはさらに片付けを行って翌17日午前10時に来たときと同じ新潟市岩室観光施設「いわむろや」から観光バス1台に乗って帰った。
前の週の半ばには季節外れの真冬同然の寒波と降雪に見舞われ、学生スタッフを苦しめたが、帰京の日は青空が広がって初夏を思わせる汗ばむ陽気となった。岩室の温泉街に活気を吹き込んだオレンジの色のスタッフジャンパーを着た学生スタッフは、それぞれが担当した旅館で別れを告げ、キャリーケースを引いて「いわむろや」に集まった。
地元からは、旅館の関係者など20人ほどが見送りに訪れ、菓子などの土産を手渡す人も。「いわむろや」で最後の片付けを行い、地元の人からスタッフジャンパーにサインしてもらった。たまたま居合わせた地元のお年寄りは「気をつけて帰ってね」、「ご苦労さまでした」と学生をねぎらった。
最後に3年中島啓さん(21)が「ぼくたちにとって第二のふるさとができたので、また遊びに来ます。そのときはよろしくお願いします」。濱松屋の若旦那、岡崎秀さん(47)は「終わり良ければすべて良しということで、本当にありがとうございました」と感謝。三本締めを行って締めくくった。
学生が乗り込んだバスを「いわむろや」の小倉荘平館長は走って追いかけ、みんなでバスが見えなくなるまで手を振って見送った。ついにバスが見えなくなると「あーあ、行っちゃった」、「寂しくなるねー」と楽しかったこれまでの時間を思い出していた。
中島さんはアートサイト岩室温泉を振り返って「あっと言う間で、もう少し長くいたかった。ぎりぎりの状況のなか、みんなタフで風をひいたりけがをすることもなく終わって良かった」と胸をなでおろした。
1年生のときに続いて2回目の参加だった。「転換期を感じた。今回がいい意味で踏み台となってくれれば」と次回の飛躍に期待。神奈川県横浜市に住むが長岡市に母の実家があり、「長岡のおばあちゃんも来いというので」ことしの夏休みは再び岩室温泉を訪れることにしている。
濱松屋の岡崎さんはアートサイト岩室温泉を2003年の始まりからずっと見てきた。「アートサイトをやることによって、まちなかは盛り上がる。宿泊にはそれほどつながらないが、旅館組合としてはできるだけ続けたい」と岡崎さんは話した。