三条市が来年度オープンする全天候型広場に向けた研修の一環で「東京の人気カレー店『スパイスカフェ』に学ぶカレーと健幸」として19日のカレー教室に続き、20日はカレー試食会と講演会が行われた。
講師は「スパイスカフェ」(東京都墨田区)のオーナーシェフ伊藤一城さん。イタリア料理店、インド料理店、スリランカ料理店で経験を積み、実家が所有する1960年築の木造アパートを自分でリノベーションし、2003年に「スパイスカフェ」を開業。今も2月は1カ月間、店を閉めてインド修行し、海外からの客を集める人気店となっている。
35人が参加し、まずは試食。クミン茶に始まり、前菜に人参サラダ、椎茸マリネ、菜の花炒め。メーンのカレーはドライカレー、サンバル、エビカレー、ココナツカレーの4種類を味わった。さらにライス&キャベツマリネ、デザートにプリン、チョコ、ムース、そしてチャイと、試食とはいえ腹いっぱいになるメニューだった。
講演会では「スパイスカフェ」のブランディングを中心に話した。伊藤さんは地元でまちづくりにも取り組んでいる。まちを活性化するためにジャズフェスなどを開くと、いろんな人が集まってまちを歩き、にぎわったが、そこから先につながらず、イベントのときしかにぎわいがなかったと言う。
「そこに人が移り住み、働き、税金を払うようになって初めてまちが活性化する」と伊藤さん。客が集まるコンテンツが必要で、その店が強くなるしかなく、「アクセスなんか全然、関係ない」、「まちづくりについて飲食店ができることは、強くなってその土地のポテンシャルをまわりに示すこと」。
オリジナルのレトルトカレー「ラッサム」を販売しているが、既製の売れるレトルトカレーの黄金のルールをあえてはずし、パッケージデザインにはおいしそうなカレーの写真を使わず、文字だけにした。
おかげでおしゃれなショップから置いてもらえるようになった。スーパーからの引き合いもあるが、レトルトカレーはあくまでもブランディングツールととらえているため、断っている。「日本から新しいスパイス料理を発信すること」で、「それがまちの発展につながる」と確信している。
前菜は1品に1種類のスパイスだけ使って調理した。4種類のカレーもそれぞれはシンプルでスパイスが引き立ち、カレーを食べているというより伊藤さんの言うスパイス料理のイメージだった。
三条飲食店組合カレーラーメン部会から9人もが参加した。部会長の「正広」店主の阿部圭作さんは、「三条で出してるカレーラーメンは、典型的なとろみの入った食堂カレーなので全然、違うが、ひとつひとつのスパイスの特徴を生かしているのが参考になった」と刺激を受け、「スパイスを炒める順番などに気をつけることなどで店でも生かせるのでは」と考えをめぐらせていた。
2011年に三条市でカレーとスパイス料理の店「くぅ象」を開いた課神奈川県川崎市出身の井上弓さんは、そもそも10年前に「スパイスカフェ」でトマトのラッサム(南インドで日常的なスープ)を味わい、いつか自分の店を開こうと思ったと打ち明ける。井上さんにとって伊藤さんは心の師。
試食して「そのころよりおいしくなった」と大満足。「くぅ象」ではタイカレーが基本だが、以前はインド風の数種類のカレーを出したこともある。しかしあまり受け入れられずメニューから外したが、再びメニューに入れてみようかと考えていた。
「スパイスカフェ」のようなスタイルの店は地方では難しいように思えるが、伊藤さんは逆に地方の方がやりやすいとすら考える。今回のメニューにもひとつのヒントがあった。伊藤さんは三条で初めて打豆の存在を知った。打豆はダイズをつぶして乾燥させた伝統的な保存食。実はこの日のドライカレーにこの打豆を使った。「地方の方がより生産者とつながることができる」と話した。