原発建設予定地として姿を消した新潟市西蒲区、旧巻町の角海浜(かくみはま)の村。消えた村の記憶が映像と語りでよみがえる「消えた角海浜」のアンコール公演が28日、西蒲区の福井旧庄屋佐藤家で行われ、120人の大入りだった。
NPO法人福井旧庄屋佐藤家保存会(斉藤文夫会長)が主催。物語は角海浜に生まれ育ったおばあさんが思い出を語るという形で進む。
角海浜には江戸時代には200戸以上があったが、過疎化が進み、明治36年の城願寺の火災の出火で20戸の民家が焼失。水不足や電化の遅れで村を出る人が続いた。昭和44年に原発建設計画が報道されると離村に拍車がかかり、同49年に廃村となった。
そうした廃村に至る歴史と同時に、角海浜は“越後毒消し”の発祥の地で、最盛期には数千人の売り子が全国を行商した。さらに角海浜にあった男と女の話もまじえ、たっぷり1時間余りにわたる公演だった。
ひとり語りはフリーアナウンサーの樋口幸子さん。角海浜が栄えた当時を思い起こさせる着物を着て演じた。それにあわせて角海浜を撮った写真を障子戸に写した。写真は福井旧庄屋佐藤家保存会会長でもある地元の斉藤文夫さん(81)。戦前の撮影は収集したもので、戦後の写真のほとんどは斉藤さんが撮影。その写真は「蒲原 昭和の記憶 カメラが捉えた昭和の残像」として出版されている。
脚本、演出の斎藤純子さんのピアノ、五十嵐正子さんのオカリナで「砂山」、「一握の砂」を演奏をはさみ、世界的なアーティストの上原木呂さんが波の音や打楽器で効果音を担当した。
会場の福井旧庄屋佐藤家は、わらぶき屋根の古民家。光りが入らないようにいして薄暗くしたいろりのある部屋で、ライトが樋口さんとその周囲をやわらかく照らし、物語の世界にぐいぐいと引き込まれ、目を赤くする人も多かった。
割れんばかりの拍手とで終演。最後にみんなで「浜辺の歌」を合唱した。
昨年8月に1日2回公演で行ったところ裕に百人を超す来場で会場はいっぱいになり、大好評。東京の小劇場から公演の打診もあった。
来場できなかった人から再演を求める声が多かったことから、アンコール公演として行ったもので、定員70人としてあまりPRしなかったが、口コミで広まって今回も120人もが来場する盛況だった。