加茂市の商店街で働く人たちを中心に181人の“加茂人”を収録した本『加茂本(かもぼん)〜加茂の店と観光〜』が発刊。加茂の人やコミュニティーを見直し、人と人をつなぐツールになると期待され、評判を呼んでいる。
A5判、152ページ。加茂市の大通りに連なる9つの商店街がある。そこにある約130の商店のうち希望した80の商店を各店1ページに収録。それぞれ店で働く人の写真と店や働く人を「新潟野球ドットコム」で知られる三条市出身のライター岡田浩人さんが取材した。
ほかにも加茂のイチ押しラーメン店、夜を盛り上げる店、寺社の紹介、「戦後の復興を支えた人たち」、「加茂を創る人々」の記事やイベント紹介もあり、“人”を通じて商店街を中心に加茂を伝える内容だ。
1万冊を作成して加茂市や収録した店に置いて無料で配布しているが、すでに残りわずかになり、増刷を検討する状況だ。
発端は、3年前から家業の「菜工房ヤマダ」=仲町1=で働く山田宗さん(33)。出版関連会社で働いた経験がある。2012年に発刊した島根県隠岐郡海士町に暮らす人たちを一冊の本にまとめた『海士人』(英治出版)をはじめ、『福井人』(同)や『三陸人』(同)に興味をもった。
おもしろい本があると、同じ加茂青年会議所のメンバーでもある日本料理「きふね」=穀町=で働く佐藤晃一さん(36)に紹介したところ、佐藤さんは同じものを加茂で作ろうと、1年ほど前にプロジェクトをスタートした。仲間を集めて加茂本製作委員会も発足。メンバー11人はいずれも加茂青年会議所のメンバーとなった。
いちばんの課題は出版にかかる費用だが、検討した結果、全国商店街振興組合連合会の「にぎわい補助金」に申請、採択された。各商店街に加茂本製作のプレゼンテーションを行って理解を得ることができ、すべての商店街の連名で申請した。
「最初は紙一枚の原稿から始まったが、本になってみると思ったよりいいできになった」と山田さんは素直に喜ぶ。自身が商店街で店を営んでいることもあり、「商店街に魅力がなくなっている。どうやって店に来てもらうかがポイントになっている」と危惧する。
それで地元の商店に足を運んでもらうには、「最後の手段は人。人も商品で、同じ人はいない」。その“人”をアピールするためのツールになるのが『加茂本』。「一見、入りづらい店ももこうして本で見れば、人柄もよく見える」、「実際に人に会うきっかけになっているのがうれしい」と言う。
加茂市商店街協同組合理事長で「ふとんのたなべ」=五番町=の田辺良夫さん(66)は、「世代が変わって若い跡継ぎを知ることができて良かった。加茂の人が加茂の人のことをわかっていなかったことをあらためて認識したのでは」と若手がもたらしら大きな成果を喜ぶ。
「商店街には自分の代で終わりという人もいるが、そのうち加茂へ帰ろうという人も出てくる。『加茂本』がそのきっかけになれば」と期待を寄せている。『加茂本』の入手など問い合わせは加茂市商店街協同組合(電話:0256-52-0775)へ。