5月15日の三条祭りの大名行列で人気者の奴(やっこ)を担当する三条先供組合(赤坂一夫会長)では、ことしは大名行列に参加できる会員が足りず、ピンチに。このままでは本来の編成を組むことができないため、新たに会員を募集している。
奴は2人1組で持つ槍(やり)が9本あり、槍持ちが18人に先箱が4人、長柄が2人。さらに行列全体と連絡をとりながら奴の運行に指示を出す、いわばコーチのような役となる取締役が前、中、後の3人がつく。
合わせて最低でも27人が必要になる。ただ、最初から最後までの行程を務めるのは体力的にも厳しく、交代要員や何かあったときの予備を含めて35人近くいるのが理想だ。
会員数にあまり増減はなく、今も44人いるものの若手の入会が少ない。高齢化で年々、行列に出られない会員が増えるばかり。平均年齢は40歳代後半という。さらにことしは大名行列が平日の金曜にあたり、仕事の都合で参加できない人が多く、23日までに参加できる会員は24人。最低限の27人にも達していない。
「このままでは槍の数を減らすか。それはみっともない。いっそ出さない方が」とまで思い詰めるのは、同組合総務の山田貴之さん(48)=三条市南四日町1=。山田仏壇店の代表で、18歳のときに友だちに誘われて同組合の直会(なおらい)に顔を出したのをきっかけに、良くわけもわからずに入会した。もう30年になる。
「最初はいやだったんですよ」と苦笑いする。しかし、身内の反応は予想外だった。「奴に出ると言うと、親がすごく喜んだ。あれをお前がやるのかと。それから大名行列の日は親せきが集まって酒を飲むようになった。今でもきょうだいで集まる」と、祭りできずなを再確認する。
奴を始めて3、4年目からおもしろさがわかってきた。奴の魅力を言葉にするのは難しいが「5月が近づくと自然と血が騒ぐ」。
大名行列で出発地の八幡宮の境内を最初に出るのが奴。緊張感が最高潮に達する瞬間だ。「奴が出発するときになると、人で埋まっていた八幡様の参道がぱーっと開く。それを見ているときがいちばんの快感かもしれない」。
奴は2人1組で槍を投げ渡しながら進み、うまく槍をキャッチするたびに沿道の見物客は拍手でわく。行列のなかで最も盛り上がる場面だ。「奴さんが来たと、楽しみに見てくれる。三条のように行列の最初から最後までずっと投げ渡ししている奴は珍しい。そんな祭りに参加できる」。それが奴の誇りだ。
誰でも奴になれる。5月3日、10日、11日の3回、旧第一中学校のグラウンドか体育館で奴の練習を行い、うち2回に出れば新人でもことしの大名行列に参加できる。当日は午前中は2班に分かれて市内のおはらいに回り、午後から大名行列で夕方の舞い込みに参加し、一日仕事になる。
自前で必要なのは肌着くらいで、衣装などはすべて用意するので費用負担はない。参加してみたい人は山田さん(電話:0256-32-4428)へ連絡する。