燕三条青年会議所(石黒良行理事長)が今年度、制作する映画「ともに担げば」のメーンキャストのひとりに三条市出身の女優、山崎日菜さん(28)が決まった。父は人気ラーメン店「侍ラーメン」=三条市大島=の大将、山崎剛さん(55)。ミュージシャンを目指した若いころの自分を振り返り、「やめろとは言えない」と照れくさそうに応援している。
1999年に「侍ラーメン」をオープンして17年目になる。今もミュージシャンとしての剛さんのイメージが強く脳裏に焼き付いている地元の同世代の人は多い。ルックスもその当時の面影を残す。
高校時代、フォークデュオを組んだ。最盛期は地元で千人も集客する人気を呼び、前座を務めたプロミュージシャンをたじろがせたこともある。コンテストでも評価は高く、高校2年でヤマハの通称“ポプコン”の関東大会で決勝へ進むほどの実力だった。勝てば“つま恋”のコンサートに出演できるところだった。
当然、デビューの話ももちあがった。しかし音楽事務所からも高校卒業を待ってという声があり、業界のかけひきにも巻き込まれた。そのうちにデュオもかみ合わなくなり、自身もフォークからロックへと方向性を変えた。運やタイミング、時代。いろいろな要素が少しずつずれてデビューは果たせなかった。
それでも今も音楽業界で活躍する人との接点が多い。長女の日菜さんは、そんな環境で育った。子どものころはバレエを習った。高校を卒業すると女優を目指して上京。2年ほどダンスを学び、舞台やメディアで活躍。今は事務所に所属しないが、これまで2つの事務所に所属し、劇団イーストンズの舞台に呼ばれ、昨年はNHK「クイズ面白ゼミナール 春のスペシャル」に出演。ことし3月までNHK FM「ラジオマン ジャック」で準レギュラーも務めている。
高校時代から夏休みや冬休みになると東京へダンスのレッスンに通った。有名アーティストの振付やダンサーを務めていたメンバーでつくるダンスグループ「バグズ・アンダー・グルーブ」のレッスンが定期的に三条市で開かれているのも、日菜さんとの交流がかぎになっている。
業界で活躍している人について剛さんは、「そういう世界はほんの一握りしかいないことは、自分が人一倍わかっている。でも若かりしころは自分も一発、当たればとも思ったし、辞めろとは言えない」。
剛さんの人脈はもちろん、日菜さんもいろいろな人とのかかわりに助けられている。今回の作品のメーンキャストに決まったのも、同じくメーンキャストとなり主題歌もつくって歌うillyさんからの紹介があった。illyさんは三条市でも何度かライブを行っている。
「人とのつながりでやれているから、そういう意味では俺も本人(日菜さん)も感謝している」と剛さん。ただ、日菜さんは中学時代から東京へ行きたいと言ったが、高校卒業まで待たせたことに、少し悪いことをしたという思いがある。日菜さんは28歳。「今、思えば東京へ出るのがちょっと遅かったかもしれない」。
日菜さんはアルバイトもしているが、今の仕事をこれからも続けると話している。「今回の映画を通して少しでも彼女を認識してもらえるようになれば。人と人を結ぶような、心に残るような芝居をしてほしい」と剛さんは誰よりも日菜さんの夢の実現を願っている。