28日午後1時から新潟市西蒲区福井、福井旧庄屋佐藤家で「いろり座談会 vol.02」として、にいがた稲作文化ドキュメンタリー&シンポジウム「暮らしの骨格」が開かれる。
出演者は新潟県民俗学会会長の三条市に生まれ住む五十嵐稔さん、会場の佐藤家を保存するNPO福井旧庄屋佐藤家保存会理事でもある郷土史研究家で写真家の斉藤文夫さん、千葉大学名誉教授でアジアデザイン文化学会総会長の宮崎清さん、新潟市西蒲区夏井の稲作農家の山上力さん、民俗研究家の結城登美雄さんの5人。
かつて多くの家にあった“火”は消え、いろりも絶たれた。火は火力発電所の中、自動車の中、ガス管の中などの仕組みに移り、茶飲み話にテレビやインターネットが介在するようになった。
農業も資本と効率を求めて機械化されて手業の技術も廃れ、暮らしの骨格は数十年の間に大きく様変わりした。なぜ変わり、忘れられてしまったのか。過去から何を引き継ぎ、何を生かせばいいのか。そこにある土地と深く関わる生活を目の当たりにして来た出演者と会場参加者とともに考える座談の場をつくり出す。午後4時に終わる。
地域の新しい形での技術、文化継承、地域活性、コミュニティづくりに寄与する団体「ブリコール」が企画するシンポジウム。昨年4月に『角海浜物語』×『阿賀に生きる』いろり座談会&上映会を開いたのに続く第2弾となる。
「水と土の芸術祭2015」市民プロジェクトの認定事業でもあり、今回のいろり座談会のほかに、新潟市西区在住の86歳の藁細工職人・山際辰夫さんの稲作を追ったドキュメンタリー映像制作や、藁(わら)細工ワークショップ(土着ワークショップ)も行っていく。
いろり座談会の参加費は資料代込み500円、定員100人。問い合わせや予約は桾沢(ぐみざわ)さん(電話:080-4051-1211、info@bricole.jp)へ。出演者のプロフィルは次の通り。
五十嵐稔さん
新潟県民具学会会長
1931年三条市生まれ、同市在住。県立三条実業高等学校卒、三条市役所勤務、退職時三条市立図書館長。現在、日本民具学会評議員、古々路(ここじ)の会代表。『三条市史』『新津市史』ほか多数の新潟県内の市町村史の調査・執筆を手掛ける。著書に『民具 採訪見聞記』(東北出版企画/2013)など。『越後の「ワラ民具」生活文化誌』を近刊予定。
斉藤文夫さん
郷土研究家・佐藤家囲炉裏の火焚き爺さん
1933年新潟市西蒲区(旧巻町)福井生まれ。NPO福井旧庄屋佐藤家保存会理事。元巻郷土資料館長の石山与五栄門氏や写真家・熊谷元一氏との出会いを機に、郷土の風景、暮らしなどドキュメント志向の写真を撮り続ける。「のぞきからくり」ほか、地域資源の発掘や文化・研究活動に尽力。著書に『角海浜物語-消えた村の記録-』(和納の窓叢書)、『蒲原 昭和の記憶-カメラが捉えた昭和の残像-』など。
宮崎清さん
千葉大学名誉教授・アジアデザイン文化学会総会長・『図説 藁の文化』著者
1943年甲府市生まれ。ワラ文化の研究で知られる。1965年千葉大学工学部工業意匠学科卒業。1967年千葉大学大学院工学研究科修了。工学博士(東京大学)。千葉大学教授・評議員・工学部長、国立大学法人千葉大学理事・ 副学長、放送大学学園特任教授・千葉学習センター長などを歴任。人間生活における生活用具のありようの研究、フィールドサーベイを中心に、地域社会の有する自然的・人工的・生活技術的資源などに基づく内発的地域開発計画の立案ならびにその方法論の検討、伝統的工芸品の意匠解析などを研究している。また中国・台湾・韓国とも関わりが深く、生活文化、工芸、デザイン、地域振興など幅広い分野での研究・指導を現地にて行ってきた。
結城登美雄さん
民俗研究家・「地元学」提唱者
1945年旧満州(中国東北部)生まれ。仙台で広告会社経営に携わったのち、15年にわたり東北の農山漁村をフィールドワークで訪ねながら、住民を主体にした地域づくりの手法「地元学」を提唱。宮城県宮崎町(現加美町)の「食の文化祭」アドバイザー、旧鳴子町「鳴子の米プロジェクト」総合プロデューサーをつとめた。著書に『山に暮らす海に生きる−東北むら紀行』(無明舎出版/1998)、『地元学からの出発』(農文協/2009)など。
山上力さん
夏井の稲作農家
1953年西蒲区(旧岩室村)夏井生まれ。美しい日本のむら景観百選の一つ、「夏井のはさ木」で知られる故郷の夏井地区で、地域ぐるみで「はさ木」の景観を守りながら、家業の稲作を続ける。30代で本格的に稲作を始め、現在、自然農に近い形での米づくり、畑作を行いながら、自身の田んぼ開放を通じ、地元岩室小学校の5・6年生に向けた稲作体験の場づくりなどにも精力的に取り組む。