明治時代から100年余り続く三条市南四日町1、山田仏壇店の四代目で伝統工芸士の山田貴之さん(47)が「三条ものづくり学校」に体験工房「塗場」をオープン。毎週土曜と日曜に開き、蒔絵(まきえ)の製作体験工房として伝統的工芸品「三条仏壇」の技を体験してもらっている。
蒔絵は、漆の上に金銀粉や色粉などを付着させる技法で、仏壇づくりには必須といえる作業。これを貴之さん指導で体験でき、土曜は蒔絵部門の伝統工芸士、春日美雪さんも指導にあたる。
参加は無料だが、材料費が必要で、材料費はめがねケース1,200円、フクロウ人形1,500円、額入り蒔絵1,500円、本うるし製はし3,000円など。
自分で下絵を描いても構わないが、春日さんがつくった型紙を使うので、初心者でもかわいいイラストから本格的な仏壇と同じ文様まで、プロ並みの作品を作れる。
鳳凰の絵にチャレンジした燕市の男性は、出来栄えに感激。龍の絵に挑戦した新潟市の女性は、「おもしろいです。次はスマホのケースを持参しようかな」と、繰り返し訪れたいと話していた。
貴之さんは、体験工房では「仏壇づくりの仕事内容を知ってもらいたい」、「外国製の仏壇もあるが、地元に職人がいることも知ってほしい」と話している。体験工房を開催してから、数珠の修理や仏壇についての質問も受けたと言い、これまで店には来たことのない人たちが訪れている。
「仏都三条」と言われるほど三条は仏教が盛んなまち。江戸時代中期の元禄3年(1690)に建立された浄土真宗大谷派本願寺別院(東別院)の造営のため、京都から呼び寄せた宮大工、指物師、飾り金具師の指導のもと、大勢の三条の職人が参加した。その後、その東別院を中心とした浄土真宗が広まるのと同時に、三条での仏壇の製造が始まったとされる。
山田仏壇店は、貴之さんの曾祖父が初代で明治の終わりころから現四日町商店街に100年余り続く。三条仏壇は各工程を職人が分業し、初代は木地、二代目の祖父は漆塗りだった。
貴之さんは、四日町小学校、第一中学校、三条工業高校を卒業して岩室の仏壇店で漆塗りと金箔押しを修行し、三代目の父に続いて家業に入った。
平成16年の7.13水害では、店は1.24メートルまで水が上がり、自宅も被害に遭った。自宅に戻れず、店の片づけも終わらないうちから仏壇の修理が次々と持ち込まれ、最終的には200本余りを修理した。貴之さんの伝統工芸士の登録は翌平成17年度で、毎晩11時ころまで仕事をして、そのあとに試験勉強をする日々を続けた。
「三条仏壇」の産地組合「三条・燕・西蒲仏壇組合」では、小学校や三条鍛冶道場などで毎年、仏壇の技術を使った製作体験などを行っていおり、それ以外の体験イベントの依頼も多い。受講した人から「もっとやってみたい」という声もあり、常設の会場がほしいと思っていたことと、考え中の新しい取り組みもあったことから、三条ものづくり学校への入居を決めた。
体験工房「塗場」は、旧三条市立南小学校校舎にことしオープンした三条ものづくり学校=三条市桜木町12-38=の206号室。6月27、28日の受付けは午前9時から午後4時まで。見学は自由。