旧湯田上温泉街を舞台に6月20日から7月20日まで開かれている「湯のまち巡り〜軒先アートギャラリー」は、4、5の2日間がメーン展示。25会場で作品展示やイベントが行われる。
展示会場は旅館だった建物や寺、空き家、営業している旅館や商店など。これまでの展示は営業中の旅館が中心だったが、週末の4、5日はすべての会場で大半が午前10時から午後5時まで公開される。
展示物は地元作家の竹工芸の小菅孔月さん、陶芸の石田一平さん、書家の青野美子さんの作品をはじめ、ご利益グッズ、ほうろう看板、矢沢永吉グッズなどのコレクションや手作り品、古道具など幅広い。
それ以前に起伏の大きな山手の細い道の周辺に点在する朽ち果てつつある旅館だった建物やうっそうとした木々に囲まれた寺社など、忘れ去られたような家並みは何十年も昔にタイムスリップしたかのような不思議な感覚に包まれる。
4、5日のメーン会場は田上町コミュニティーセンター。新潟経営大学学生が「恋する七夕アート」と題して4日は午前に七夕アートの教室、午後から浴衣の着付けと写真撮影、午後7時からAKARIBAコラボの夜の湯めぐり散策を行う。
さらにフジロックに出演したこともあるバンドなどによる音楽ライブをはじめ、ウルトラマンと仮面ライダーのグッズのコレクションの展示、まちあるき写真展、田上中美術部が制作した七夕飾り、フロストガラスや切り絵の展示も行う。
もうひとつのイベント会場、旧共同浴場ゆごや会場では主に販売を行う。湯田上温泉旅館共同組合が温泉水出しコーヒー、田上町障がい者支援センターが飲食など、PUPONSが子ども服と輸入雑貨、カンテツ座が田上のタケノコ入りカンテツコロッケ、田上町観光協会が温泉の足湯、JAにいがた南蒲青年部田上支部が農産物をそれぞれ提供する。
注目なのが華蔵院で開かれる茶会。湯田上温泉旅館共同組合女将会が2日間とも午前10時から午後3時まで抹茶を提供する。華蔵院は尼寺だったが、15年ほど前から空き寺になっている。かつては尼僧が地元の人たちに華道や裁縫を教え、茶会も開かれていた。主はなくとも今も近くに住む田上町田上、相沢ヤイさん(80)が華蔵院の庭を手入れしており、青々とコケが広がる石段と茶室の庭が美しい華蔵院で何十年かぶりに茶会が復活する。
各展示会場では週末に向けて急ピッチで準備が進んでいる。展示会場のひとつ、旧末廣館では、作品展示とあわせて玄関を入ってすぐのいろりのある部屋を昭和50年代の雰囲気に再現しようと2日夜、作業が行われた。
末廣館は昭和55年(1980)に今の建物に移転し、旧末廣館はそのときから使われていない。そこにブラウン管テレビや当時の日立のラジカセ「パディスコ」、ピンク電話、昭和50年発行の雑誌など持ち込み、40年前の空間を再現した。
湯田上温泉は元文3年(1738)に開湯、昭和35年(1960)ころには20数軒もの旅籠(はたご)があり、芸妓(げいこ)は40人を数えるにぎやかな温泉街だった。しかし山道は大型バスが通れないこともあり、山の下へ移転する旅館が相次ぎ、旧温泉街の灯は消えた。
忘れられた旧温泉街を観光資源としてもふたたびスポットライトを当てようと初めて行っているイベントで、実行委員会を組織し、田上町観光協会(野沢幸司会長)とともに主催する。
日曜の5日は田上町役場臨時駐車場、田上町コミュニティーセンター、田上駅、湯っ多里館前を巡回するシャトルバスを運行する。付近はヤブカが多いので、虫よけ対策をした方がいい。