三条市下田地区の集落のほとんどが7月中にイネに虫がつかないように追い払う行事「虫送り」が行われており、12日行われた荒沢の虫送りには荒沢を拠点に活動する地域おこし協力隊も加わり、数十人が参加して集落を一周した。
虫送りは農作物の害虫の駆除を祈って主に初夏に行われる行事。全国各地でいろいろな形で行われている。下田地区では子どもたちが飾り付けをしたササでイネをなでながら集落を一周し、害虫をくっつけたササを燃やすのが基本的なスタイル。ただ、今は燃やすことはなくなり、7月15日行うところが多かったが、参加しやすいように週末に行うところが増えている。虫送りを復活させた集落も出ている。
荒沢では午後4時に集合場所の荒沢ふれあいセンターを出発。ほら貝と太鼓を先頭に、子どもたちは七夕のように短冊や折り紙を飾ったササを持ち、地元の人たちで行列をつくって進んだ。鳴り物の音に誘われて通りかかった家の子どもたちも用意したササを手に合流。最終的に子どもは十数人になり、家から出てきた人には菓子を詰め合わせた袋を配った。
害虫に狙われるイネは茎を伸ばしてして青々と茂り、じゅうたんのよう。遠くに八木ヶ鼻を望み、深い緑の森も視野に入り、自然がいっぱいだ。ササに下げた短冊には「マラソン大会で1位になれますように」、「保育士になりたい」、「アイドルになりたい」。青空が広がって歩いていると汗がにじむ夏の暑さで、歩くうちにどんどん影が長く伸びていた。
1時間余りかけて荒沢ふれあいセンターに戻った。地元のお年寄りは「いっぺ虫、くっつけてきたか?」と子どもたちに聞き、害虫をたくさんくっつけてきたはずのササを回収した。
荒沢を拠点に「NPO法人ソーシャルファームさんじょう」に従事する地域おこし協力隊の2人も参加した。ひとりは1日に着任した長岡市中之島出身の大滝雄斗さん(25)。虫送りを初めて体験し、「歩いているとみんな家の中から出てきてくれ、地域に根差した行事と思った」。
もうひとりは8月1日に着任する籾山愛香さん(26)。三条市三条地区の出身で埼玉県川越市に住んでいたが、協力隊員となるために結婚したばかりの夫とふたりで故郷へ戻る。やはり虫送りは初めてで、「子どもたちから行事の意味を教えてもらった。長く受け継がれてきた行事を体感できて良かった」と話した。