弥彦村麓の生まれで中央の美術団体「一陽会」企画運営の洋画家、鈴木力(つよし)さん(77)=新潟市西区=の個展「版画の世界展」が30日まで弥彦の丘美術館で開かれており、今なお新たな表現を追究し続ける鈴木さんの版画作品ばかりを展示している。
物資が不足した戦後は、版画を額縁に入れず、マットに入れたまま展示することがあったと言われるが、今回の展示も額縁なしでマットに入れて展示。それも展示したい作品が会場に入り切らないこともあり、大半が1枚のマットに組み写真のように作品を納め、約50点を29枚のマットに配置して展示している。
鈴木さんはテンペラ画を数多く手掛け、1987年には安井賞の第30回展では受賞を逃したものの最後の6点まで受賞候補に選抜された。一方で版画にも取り組み、県内で版画だけの個展を開くのは今回が初めて。そのきっかけとなった1960年の年賀状用に制作した作品をはじめ、日本版画協会展の出品作を中心に展示する。
制作年代によってポスターカラーのように鮮やかな発色の面の構成、シュールレアリスムのような表現、コラージュを駆使、モノトーンで幻想的にと、作風が変化している。2000年代以降はイタリアで見た横に走る稲妻に刺激された抽象的な作品が多い。「ピカー、ピカ、ピカ」、「ゴロ、ゴロ、ゴロー、ピカー」と雷の擬音をタイトルにし、音のリズムも楽しい。
変化し続ける作品は年齢を感じさせない。これとは別にロビーに展示している小品7点も人気だ。8日と23日はいずれも午後2時から鈴木さん本人が作品解説を行う。入館料は高校生以上300円、小中学生150円、午前9時から午後4時半まで開館。