女優の川島なお美さんが25日、胆管がんで亡くなった。川島さんが出演予定だったミュージカル「クリスマス・キャロル」を上演する劇団スイセイ・ミュージカルの看板俳優、吉田要士さんが翌26日、燕市を訪れ、最後に川島さんと会ってから20日とたたないうちの悲報に「まだ実感がない」と声を詰まらせた。
「クリスマス・キャロル」は12月20日に燕市文化会館でも公演が行われ、それを前に26日、燕市分水児童館「童楽夢」で行われたミュージカルのワークショップの講師として吉田さんは燕市を訪れた。
吉田さんは09年の「フットルース」から4作品で川島さんと一緒に舞台に立ち、再演を含めると7公演をともにした。
公演中、吉田さんはなお美さんとずっと一緒に交通、宿泊をともにした。舞台がはねると一緒にご飯を食べてホテルへ行き、「おやすみなさい、あしたは何時にロビーで、と言うことをずっとやってた」。ツアーになると川島さんの夫よりずっと長く一緒にいたので、いろんな話をした。
川島さんと最後に会ったのは、今月6日に行われた劇団の20周年記念コンサート。川島さんは客として来てくれ、「クリスマス・キャロル」の主演の川崎麻世さんも一緒だった。コンサート中に吉田さんは川島さんに4作品に出演してもらったことなどについてインタビューした。「なお美さんは、さすがにやせてはいたが、ものすごくパワフルで、麻世さんと漫才のように話がどんどん盛り上がった」。コンサート後も川島さんは元気で「またけいこで会いましょうって言って別れた」。
13日に「クリスマス・キャロル」のけいこに川島さんは参加した。吉田さんはその日はけいこがなく、川島さんとは会えなかったが、川島さんがけいこ場の階段を上がるのがつらそうだったという報告を受けていた。
それから川島さんが上演中の舞台を降板、そして「クリスマス・キャロル」の降板、渡辺めぐみさんの代役決定、川島さんの死去と事態はあっという間にばたばたと進んだ。「まさかこうなるとは想像もしてなくて」、「こんなに早くとは」と吉田さんは声を詰まらせる。
ワークショップでアンコールに応えて披露した「クリスマス・キャロル」のなかのナンバー「それぞれの世界へ」は、川島さんも好きな曲だった。歌詞に「生きることは、選ばれた者に与えられた最高の贈り物」というくだりがある。20周年コンサートでもこの曲を歌った。
曲の中盤で、川島さんがおえつしているのが見えた。「ぼくが歌えなくなっちゃうので、なお美さん、泣かないでと思いながら歌ったが、何か、何か、すごい思いをしているというのはわかった。だから今になって思うと、自分でわかってたんでしょうね」。
ことしで3年目になる「クリスマス・キャロル」は、吉田さんにとって特別な舞台になる。劇団スイセイ・ミュージカルは、公式サイトに追悼企画「思い出の写真館」として、川島さんが同劇団の作品に出演したときの舞台写真を掲載した。