12月20日に燕市文化会館でミュージカル「クリスマス・キャロル」が上演されるのを前に26日、燕市分水児童館「童楽夢(どらむ)」劇団員を講師にミュージカルのワークショップが行われ、地元の子どもたち18人が参加してミュージカルの魅力を体感し、自分自身も驚くほどの感動も味わうマジックが生まれた。
上演するのは劇団スイセイ・ミュージカル。主役のスクルージを川崎麻世、スクルージの過去の婚約者イザベラを亡くなった川島なお美さんの代役、渡辺めぐみさんが演じるが、ワークショップには亡霊のマーレイを演じる同劇団の看板俳優、吉田要士さんと複数の役を演じる福田佑子さんが講師を務めた。
口、鼻、目と顔の体操から全身を動かしてストレッチ、ピアノ伴奏で発声練習と、段階的に体と心をほぐしてから、「クリスマス・キャロル」の一部を取り上げてミュージカルの3つの要素である歌、ダンス、芝居を練習した。
歌はメーンテーマの一部を練習。吉田さんは、「チョコレートにおいのような、いいにおいをかいでいるように想像するといい顔になる」と、子どもたちにもわかりやすく教えた。
参加したのは地元分水小学校の児童がほとんどで、小学校1年生から上は19歳まで、18人のうち3人が男の子。また、大半は同児童館のダンスサークルに通っているので、ダンスはもちろん、飲み込みが早く、2時間のワークショップも子どもたちは飽きるどころか、どんどん熱中していった。
最後に子どもたちは、見学していた保護者に向かって3つの要素を通して披露。子どもたちが短時間で覚えたとは思えない見事な出来栄えに思わず「ブラボー!」の声も上がり、感動していた。
ここで終わるところだったが、いったん退場した劇団員を同児童館の「アンコール!」の音頭で呼び戻した。それならばと吉田さんは、スクルージとマーレイがかけ合いで歌う「それぞれの世界へ」をひとりで歌ってみせた。
部屋全体が鳴っているかのような声量や歌唱力、吉田さん以外は何も見えなくなってしまうよう存在感や表現力はまさに圧巻。生身の人間が磨き上げた能力は理屈を吹き飛ばしてしまうくらい圧倒的で、おそらく舞台で感じるのとも違う魅力で引きつけた。
吉田さんが歌い始めてすぐに小学校低学年の男が泣き始め、しまいにはおえつをもらすほど。保護者も目を潤ませる人が多く、歌だけで大きな感動を味わっている体験に自分自身が戸惑いを覚えているようだった。最後に吉田さんは本番より一足早く「クリスマス・キャロル」のあらすじを紹介し、今度は舞台へ足を運んでほしいと話した。
ワークショップ後、「こっちの方がよっぽど感動させてもらいました」と吉田さん。アンコールで歌ったときは、「歌い始めたらすぐに男の子がうるうるして。ほかの子どもたちも微動だにしなくて、ぼくの方がびっくりした」と子どもたちようすに逆に感動させられた。
「みんな舞台も見に来てくれると思うので、そのときは今と違う大感動が待ってる。音楽や舞台の芝居からいろんなものを感じとると思う。それが大きくなっていくなかで、何かしらの大きな意味をもつと思う」と話した。
参加した小学校2年生の女の子のお母さんは「学校からもらってきたちらしを見て、本人がやってみたいと言った。ふだん、自分から何をやりたいとか言わない子だけど、きょうは楽しかったみたいで、いい顔をしていた」と、いろいろなことに積極的に取り組むきっかけになることにも期待していた。