1日から4日までの「燕三条 工場の祭典」は、週末の3、4日が本番。燕三条のオープンファクトリーの定番ともいえる鎚起銅器の玉川堂(玉川基行社長・燕市中央通2)は、大勢の見学者でにぎわっている。
玉川堂の1年間の客は3年前が700人で、工場の祭典が始まった一昨年は2,000人、昨年は2,800人と大きく増えた。今回の工場の祭典は、1日は77人にとどまったが、2日は250人余り、3日は300人ペースの大入りだった。
3日午前、玉川堂には外国人向けの英語によるオフィシャルツアーが訪れたが、残念ながら参加者15人がすべて日本人で結局、日本語のツアーになった。一般の見学は1時間ごとに行っている。午後1時からの回にはざっと80人が訪れ、入場制限が必要なほどの人気だった。
見学とは別に3、4日とも1日10人ずつ参加してぐいのみを作るワークショップを行っており、3倍を超す参加申し込みがあり、ほとんどが県外からの参加者だ。
全国産業観光フォーラムに参加してそのまま残って工場の祭典で工場を回っていた秋田県大館市から訪れた観光協会の職員は、「どこもかしこもきれいで、町工場という感じがしない」と目を見張った。「ひとつの会社に職人が何十人もいるのも驚いた。大館はまだまだこれから」と刺激を受けていた。
学生の見学が多いのも工場の祭典の特徴だ、。東京芸大の工芸科で鍛金を学ぶ6人のグループは2日から4日まで3日間の日程で訪れた。鍛金のリアルな現場を見たいと玉川堂を訪れ、「やってることは同じなのに、どこか違う」、「当て金がすごい。あの安定感」と一般の人とは全然違う視点で見学していた。
長岡造形大の美術・工芸学科の生徒は、学外研修としてグループに分けれて3日か4日に見学に訪れている。2年生6人のグループは、午前は燕市の藤次郎、日本洋食器、武田金型製作所を見学して玉川堂へ。
「鎚起銅器がどう社会で使われているのかを見たい」と言い、「器がめっちゃ、おしゃれ」と目を輝かせた。「藤次郎で造形大の鍛金の卒業生が説明してくれて不思議な感じだった」と職場としての燕三条地域の存在感が増していた。このあとは小林工業と燕市産業史料館を回る計画だった。
この日、午後3時から燕市・ツバメコーヒーで行われたパネルトークに出演するために来燕した明治大学理工学部准教授で哲学者の鞍田祟さんも見学に訪れた。無名の職人が手がけた生活道具に注目する“民藝”に関する多くの著書がある。
玉川堂を訪れたのは2回目で、説明を聞いたのは初めて。「デパートで価格だけを見て高いなで終わるのでなく、作ってる現場を見ることで価格に納得できると言われたのが、良くわかった」。民藝に照らすと「価格で言うと民藝の価格ではないかもしれないが、何代も使い続けるものと考えたら作り方もていねいだし、長く子や孫まで使いづけるために選ぶならあり得る価格」と話していた。
正面には新潟市のフードユニット「DAIDOCO(ダイドコ)」が最終日4日までキッチンカーでカレーライスやかき氷を販売している。カレーライスは工場の祭典の初日オフィシャル・レセプションにも出店したツバメ三条スパイス研究所のカレー。500円のところ、プラス100円でステンレスのカレー皿と、形状や皿の縁の処理が異なる3種類のスプーンで食べ比べられる工場の祭典らしい趣向を用意している。