燕市分水地区にヤギを飼っているユニークな会社がある。9月には子ヤギも生まれてヤギは4頭になり、近所の人気になっている。
ヤギを飼っているのは、木彫彫刻の「沖野彫刻」(沖野兼一社長・燕市新堀)で、別会社のカッティングシートを作る「切り文字屋オッケイ」(同)も同居する。
会社に隣接する土地でヤギを飼っており、9月4日に子ヤギが生まれた。名前は「ユメ」。生まれた瞬間を見た人はなく、出社するとすでに子ヤギは立ち上がっていた。
生後1カ月余りたって体重は10キロ以上になった。学校が終わると近所の子どもたちがしょっちゅう見学に訪れ、おとなも来る。毎日、見学に来る“ファン”もいる。近所の保育園の散歩コースに組み込まれていたりもする。
一昨年、茨城県の宮大工からヤギを譲るという話があった。しかし飼う土地がなかったが、同じタイミングで隣地を無償で貸すという話があり、さらに福島県からもヤギを譲るという話が舞い込んだ。
社長の沖野兼一さん(45)「偶然が重なったのは、神様がヤギを飼えと言っているということか」と全部、まとめて引き受けた。隣地には柵を巡らせ、もらった小屋を移築するなどして、ちょっとしたヤギの牧場になった。さらに茨城からヤギが増えすぎたからともう1頭を譲り受けて3頭に。子ヤギの誕生でこれで4頭になった。
さらに隣地を買ってことしは畑を作った。雑草を取りたいところにヤギをつないで置くとヤギが雑草を食べてくれるので、つなぐ場所を移動させて雑草を退治してもらっている。
同社は会社の2階から1階へ滑り降りる滑り台を設置し、テレビ朝日の番組「ナニコレ珍百景」で珍百景に登録されている。社員でプロモーションビデオをつくり、切り文字屋オッケイのキャラクターのカニをテーマにした「かにかにチョッキンズ!の歌もつくっている。
畑の余った土地には池を作ってコイを放し、立て看板に「釣りOK!」と記す。どこまでが本気でどこまでが冗談か良くわからない遊び心がいっぱいだ。
「冬はえさやりが必要だけど、勝手に草を食べてくれるので数日間、放ったらかしても大丈夫」と沖野さんはヤギを飼うのは意外にやさしいと言う。ヤギのミルクを取るわけでもなく直接、会社の役に立つことはないが、「近所のお年寄りは昔、ヤギを飼っていたと懐かしそうに話してくれる」と言い、コミュニケーションのネタとしても一役買ってくれる。
また、ネット通販が中心の「切り文字屋オッケイ」のサイトに掲載したり、客にヤギの写真を送るとそれで会話が弾むこともあり、営業ツールとして貢献することも。イベントにヤギを貸してほしいという声もあり、沖野さんは「いつでもヤギを見に来てほしいし、要望があれば貸し出したい」とヤギを見て笑顔になる人たちの反応を喜んでいる。