鍬(くわ)をはじめとする農具メーカーの株式会社相田合同工場(相田聡社長・三条市田島1)は、今年度の経産省主催第9回製品安全対策優良企業表彰で3回目の最高賞、経済産業大臣賞に決まった。これにより「製品安全対策ゴールド企業マーク」を授与されることになった。
12日午後3時半から東京都・渋谷区文化総合センター大和田で受賞表彰式が行われる。同社は前回受賞のときの表彰式には、社員に受賞の重さや意味を知ってもらおうと社員全員で出席したが、今回は出荷日と重なったこともあり、相田社長をはじめ4人で出席。経済産業大臣賞受賞企業4社はそれぞれ15分間のプレゼンテーションを行い、同社もそのひとつとしてプレゼンする。
経産省は、民間企業の製品安全に対する積極的な取り組みを促進し、社会全体として製品安全の価値を定着させようと平成19年度から製品安全対策優良企業表彰を行っている。大企業製造・輸入事業者部門、大企業小売販売事業者部門、中小企業製造・輸入事業者部門、中小企業小売販売事業者部門の4部門あり、同社は中小企業製造・輸入事業者部門で受賞した。
各部門には経済産業大臣賞のほかに、商務流通保安審議官賞と優良賞(委員会賞)、さらに部門に関係なく特別賞があり、今回は合わせて16社・機関が第9回製品安全対策優良企業に決まった。同社は平成22年度、25年度に続き、エントリーした3回すべてで経済産業大臣賞の受賞となった。
昨年度から表彰制度に新たに製品安全対策ゴールド企業マークが創設された。経済産業大臣賞を3回以上の受賞で授与されるもので、昨年度は上新電機が初めて受け、今回は同社を含めイトーヨーカ堂、バンダイの3社が受けることになった。中小企業部門では同社が初めて。
表彰では、安全な製品を製造・輸入するための取り組み、製品を安全に使用してもらうための取り組み、出荷後に安全上の問題が判明した際の取り組み、製品安全文化構築への取り組みの4つの視点で審査される。7月にエントリーシートによる書類審査、9月にプレゼンテーションによる二次審査、10月に委員による現地ヒアリング調査が行われた。
「ゴールド企業マークがほしくて頑張った結果、とることができた」と相田社長(53)は安堵し、喜ぶ。と言うのも「3回目の今回がいちばん、しんどかった」から。受賞は絶対評価ではなく、相対評価なので、同じことを続けてるだけでは次の受賞はない。受賞後に評価シートを受け、不足していた部分の指摘を受ける。それを基に改善して再びエントリーする必要があり、その取り組みに2回目まで3年間、3回目までに2年間の時間を要した。
今回の受賞に向けては、社内だけにとどまらず、取引先や協力会社の理解、協力を得る必要にも迫られる新たなステップに切り込んだ。安全対策を高めるほどコストアップにつながり、それは製品の価格に反映される。取引先はそこまでの安全性を求めていないかも知れないが、市場の原則や目先の合理性を最優先していては受賞はままならず、衝突することもあった。
安全な製品を作ることと同時にユーザーに安全な使い方の情報を伝えなければ最終的な安全に結びつかない。ユーザーに使い方の情報を発信し、何かあったときの対応も必要になる。価格に反映させるには、安全性に価値を感じるユーザーを育てなければならない。
今回は相田社長のほかに入社5年目の製品安全プロジェクトリーダー、高橋優佑さん(27)が中心となって取り組みを進めた。高橋さんは大学で製品安全対策を学んでおり、相田社長にとって安全対策の頼もしい右腕。4年前にもそれまで農具にはなかった取扱説明書を作成する作業にも取り組んでおり、安全対策を継続していくうえで高橋さんは中心的な存在だ。
ゴールド企業マークを受けることで製品安全対策優良企業表彰の応募資格が無くなる。いわば卒業というわけで、審査のチェックを受けられなくなるが、「ゴールド企業マークを受けることで周りの目はもっと厳しくなる」と相田社長は気を引き締める。一方で受賞企業を対象に年2回開かれる製品安全コミュニティーの会議に出席できることを喜んでおり、「地域では製品安全リーディングカンパニーと言われるようになり、製品安全の思想を地域で広げていく必要がある」と自ら責務を課す。
同じ部門で昨年度は燕市のフジイコーポレーション株式会社が優良賞、今回は燕市の有限会社栄工業が商務流通保安審議官賞を受けた。相田社長は「この部門の受賞4件を燕三条の企業が独占するようになったら、ものづくりのまちの新たな価値になる」と夢見る。「ぜひ地元企業でもエントリーしてほしい。ノウハウはあるので、声をかけてもらえたら喜んでアドバイスしたい」と新たな企業の挑戦を待っている。