三条市・一ノ木戸商店街のみんなのまちの交流拠点「みんくる」が行っている委託販売棚に並んでいた地元で作られている創作かんざしが、一気にイタリア・ミラノの高級セレクトショップに海外進出することになり、反響が期待される。
販売するのは創作かんざしの「錫千代(すずちよ)」。ミラノ中心部の高級ブティックが立ち並ぶおしゃれなストリート「コルソコモ」と個性的なセレクトショップが集まるブレラ地区の中心にある高級セレクトショップ「g81」で販売する。
同店は日本人が経営し、30歳代から40歳代の女性をターゲットにした高級ブティックで、日本の産品も集めて販売している。10月末で閉幕したミラノ国際博覧会の日本館が人気パビリオンとなり、日本に対する関心が高まっている絶好のタイミング。錫千代の商品は13日にも発送し、早ければ今月中にも販売が始まりそうだ。
錫千代の海外進出を思いついたのは「みんくる」スタッフの石本史子さんだ。イタリア語講師でもあり、慶応大学を卒業し、1年半、イタリアのフィレンツェに語学留学した経験がある。「みんくる」では委託販売棚を設置して希望する人に有償でスペースを貸し、趣味の手芸作品などを販売してもらっている。
販売されていた商品のなかに錫千代のかんざしがあり、石本さんは「日本よりもヨーロッパの方が売れると思った」。8月末にイタリアの友人に日本のものを売ってくれるところはないかと照会したところ、すぐに2カ所の候補があがり、そのうちのひとつ「G81」 での販売がとんとん拍子で決まった。同店での販売はあくまでも「みんくる」との間での契約で、「みんくる」は販売代行手数料を受けるような形で利益を得る。
「錫千代」を手掛けるのは、三条市に住む田口千代子さん。10年近く前、子どもの七五三用の髪飾りを探したが気に入ったものが見つからなかった。自分でも作れるかもしれないと市販の髪飾りを分解したのが始まりだった。
かなざしは江戸時代から伝わる「つまみ細工」と呼ぶ技法で作られていた。薄絹の羽二重(はぶたえ)などをつまんで畳み、文様をつくる東京都指定の伝統工芸。近年、つまみ細工は人気で、作り方を解説している本も数多いが、当時はほとんど解説本がなかった。2、3年前から東京までつまみ細工のけいこに通うようになり、今も続いている。
田口さんの作品は、伝統的なつまみ細工の手法に自分なりのアレンジを加えた創作性の高いもので、色遣いやデザインに野暮ったさを感じない。パンクな雰囲気もあり、そこに石本さんもほれた。
田口さんは「地方から東京、そして海外へならわかるが、まさかいきなりに海外で自分の作品を売ってもらえるとは思わなかった」と喜ぶ。「これから続く人たちの希望になるような存在になれれば」と願っている。
今回は半年契約の販売だが、人気を呼べば契約更新や販路拡大、あるいは「錫千代」以外の商品にも取り扱いが広がる可能性もあり、その試金石ともなる今回の販売に石本さんも大きな期待を寄せている。