コミュニティーデザインの株式会社studio-L(山崎亮代表)の息が掛かった地域や団体を中心に全国の地域づくり活動をしている人たちが一堂に介する「今宵サミット in 燕」が5、6の2日間、燕三条地場産業振興センターで開かれた。燕市の「つばめ若者会議」が主催し、山形県から宮崎県まで全国18地域・団体から約190人が参加して交流し、それぞれの地域の取り組みや課題、意識を共有した。
「今宵サミット」は、コミュニティーデザイナー山崎亮さんが代表に就く株式会社studio-Lが、2012年から香川県観音寺市で取り組む観音寺まちなか再生プロジェクトをきっかけに始まった。プロジェクトのメンバーのひとりが毎晩のようにFacebookで「今宵も始まりました」と晩酌の写真をアップを始めると、ほかのメンバーも同様にアップするようになった。
Facebookグループ「今宵もはじまりました(^.^)/~~~」を開設し、studio-Lがかかわった全国各地のまちづくりに取り組む人たちが投稿するようになってネット上での交流が広がった。そのうちに全国の仲間たちがオフラインでつながる場として一昨年、観音寺市で初めて「今宵サミット」が開かれ、昨年は群馬県富岡市の富岡まちづくりワークショップを運営するチーム「スマイルとみおか」で開催。その場で参加した「つばめ若者会議」が翌年の燕市開催をプレゼンテーションし、燕市への誘致に成功した。
つばめ若者会議は、燕市の20年後の未来ビジョンを考えようと、40歳以下の会員を募って取り組んでいる。4日夜から一部が参加して燕市のディープなスポットをめぐる前夜祭を行い、5日は午後から開会した。
つばめ若者会議メンバーで「今宵サミット in 燕」実行委員長の捧美佳さん(30)は、今回の今宵サミットのテーマは「しあわせな人をふやすアクションについて考える」であり、「ふつうに生活しているだけでは会えないであろう皆さんとつながり、たくさんいろいろな刺激を受けていただきたい。ものすごくかしこまった会ではなく、皆さんの笑顔とすてきなハプニングが続出するワクワクの2日間なることを期待する」とあいさつした。
鈴木力市長はあいさつで、若い人たちが意見を言う、行動する、発揮する場がないという意識からトップダウンでつばめ若者会議をスタートしたことを話した。昨年の富岡市の今宵サミットで、翌年の開催を燕市に誘致するよう命令したと言い、「いろんな地域のまちづくりに取り組んでいる方々が意見交換し、情報交換し、触発し合い、それを持ち帰ってそれぞれ地域で生かしてほしい」と願った。
studio-Lの山崎さんは、若者だけに対象を限定したつばめ若者会議を始めたのは「勇気のいること」と鈴木市長を評価する一方、「こういう市長がいないできないというわけではない」とし、地域によって状況が異なり、「地域を元気にしようという気持ちを携えて一緒にプロジェクトを進めていこうという人たちが集まっている」とし、「ひとつでも多くつながりと知識を得てそれぞれの地域に戻っていただきたい」と期待した。
開会式を前に午前は「燕の王道ツアー」、「ワンダーツアー」と題して参加者を対象にオプショナルツアーを行い、燕市産業史料館を見学し、同史料館で鎚起銅器の小皿、MGNETでマネークリップかティスプーンを作る3コースに合わせて22人が参加。昼食は燕名物、杭州飯店で背脂ラーメンを味わった。
開会式後は12地域・団体が事例発表のあと分科会で意見交換した。夕方は夕食と打ち上げを兼ねて「ごちそうキャノンボール」を行い、12班に分かれてそれぞれ市内の飲食店へ食事に行き、あわせて5,000円分の料理を持ち帰って二次会の打ち上げ。さらに班ごとにブースを設けてそれぞれの店の特徴などを書いてアピールし、みんなで食べながら人気投票した。
最後は運営のサポートにもあたった山形県・東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科の学生の指導で全員で花笠音頭を踊り、来年の今宵サミット開催地を十日町市に決め、再来年は広島県福山市でという流れになった。
「ごちそうキャノンボール」のスタート前には、鈴木市長が「金属酒器乾杯運動」の普及を提唱していることから、参加者にプレゼントする燕市で作られたステンレス製のビアゴブレットで乾杯。寸劇仕立てで司会進行したりと“燕流”で参加者をもてなした。
まちづくりに主体的にかかわっていてワークショップにも慣れた人ばかりとあって、言われるまでも進んで積極的に交流し、密度の濃い異常なほどの盛り上がりに。近くの居酒屋で開かれた三次会は60人以上が参加する大宴会となった。
「今宵もはじまりました」とFacebookに投稿を始め、今宵サミットが生まれるきっかけをつくったまさに張本人の観音寺市の竹内勉さん(66)は「どういう風にしたら活動が広まるか考えたときに、みんな仲間たちが“今宵もはじまりました”とやるようになった」。おかげで「全国から個人で観音寺に一緒に飲みたいと来てくれる」と、全国的な広がりを見せたことを喜び、「燕市も交流人口を増やしてほしい」と期待した。
一方、studio-Lは山崎さんが講演する先々で観音寺市の「今宵もはじまりました」を紹介したくらいで直接、何も手を貸していないのに全国的に広がって今宵サミットの開催に至った。山崎さんは「大変なことになってますね。年々、趣向を凝らすようになってきている」と目を丸くした。
まちづくりに真剣になればなるほど、行政との関係、自分たちはどこまでかかわればいいのかと悩みが大きくなり、「同じ立場で地域で悩んできたことを笑いながら話せるのは、このうえなく気持ちがいいことなのではないか。ここに来ると一種と独特の雰囲気になる」と今宵サミットという場の意義を語る。
どうやったら確信をもちながら活動を進められるようになるかと聞くと、山崎さんは「歩みを止めないこと」、「経験を積むことが確証になる」、「10年、活動を続けたら10年後にはそんなこともあったなとなる」と自信をもって継続するようアドバイスした。
昨年の開催地、富岡市の「スマイルとみおか」のメンバーの富岡市職員、大日方貴史さん(38)は燕市の今宵サミットに「完成度が高くてびっくりした。どれだけ今宵サミットに向けて取り組んできたか伝わった」、「しかも自分たちの楽しむことは忘れていなかった」と燕のもてなしを堪能した。
翌6日は「未来」をテーマに、幸せな人を増やすアクションについて山崎さんやつばめ若者会議のメンバーをパネリストにパネルディスカッションを行った。
■事例発表の発表者