三条ものづくり学校は6日、同校に開設した「燕三条ミニ四駆大学」(根津孝太学長)のオープニングイベントで、学長に就いたデザイナーの根津孝太さんによるセミナーを行った。
根津さんは千葉大学工学部工業意匠学科を卒業してトヨタ自動車に入社。愛・地球博で「i-unit」コンセプト開発リーダーを務め、2005年に退社するとznug designを設立。自動車など工業製品のコンセプト企画とデザインを手掛けて数々の賞を受け、昨年からグッドデザイン賞審査委員に就いている。
ミニ四駆でも「RAIKIRI」と「Astralster」の2車種をデザインし、三条市とはダイハツ工業の共同プロジェクト「LOVE SANJO」のコーディネーターとして新型「コペン」の開発にも参加。「燕三条 工場の祭典」では一昨年に根津さんを迎えてマルト長谷川工作所にミニ四駆コースを設置し、ワークショップを開き、以来、毎年開催。そんなつながりから根津さんから学長に就任してもらった。
セミナーのテーマは「コミュニケーションはクリエイション〜プロダクトイン、マーケットアウトを超えて〜」。40人近くが参加し、根津さんはこれまでの取り組んできた仕事を裏話もまじえて事例として紹介しながら話を進めた。
突っ込みどころ満載なアイデモでも、「とりあえず自分で原案を出しちゃうと、突っ込んでくれる人は突っ込んでくれる。それはすごく大事なことで、だめだと言われたら、どこがだめなんですかと言えばいい。そうすると教えてくれる。そういうコミュニケーションが大好きで、突っ込まれたら本当にありがたいなと思う」と根津さん。
実際に現場で製造する人たちと理想像を共有することで、「ふつう100言って80くらいできたら、わっ、すごいなって思う」ことが110、120、そして150にもなる。これが根津さんの言う、コミュニケーションはクリエーション。「デザイナーなので、ひとりだと何も作れない。周りの人の心をどれだけ動かせるかというところで、勝負している」。
三条ものづくり学校に照らせば「きょう、こういうリアルな場があって、いいなと思う。三条ものづくり学校っていう場があって、皆さん実際に来てくださって直接、お話ししている。こういうことがものづくりにはとっても大事」と、ものづくりの理想的なコミュニケーションの場がここにあることを評価した。
3Dプリントで作ったミニ四駆の大会をやったことがあり、三条ものづくり学校には3Dプリンターがあるので、「そういうのもここでやれれば」。ファブレスで工場をもたずに車の地産地消みたいなものをやりたいと考えており、「ぜひ三条市さんとも組めないか」と三条市との連携にも期待した。
参加者は、合理的な考え方や理屈だけではなく、根津さんのわくわく感や遊び心にあふれたものづくりに向かうハートにも共感し、刺激を受けていた。