新潟市西蒲区の旧巻町・福井集落に江戸時代から建つかやぶきの古民家「福井旧庄屋佐藤家」を中心となって管理、運営する斉藤文夫さん(82)は、所蔵する本や収集した資料が散逸したり、廃棄されたりしないようにと今月、旧庄屋佐藤家に図書室を開設して本や資料を移した。
図書室に充てたのは奥の八畳間。本棚を設置して斉藤さんが所蔵する約700冊の本と約150冊のスクラップブックを収めた。貸し出しはせず、読みたい人には図書室まで来てもらうという利用法。どうしてもデータなどの持ち帰りが必要ならコピーを取ってもらう。
斉藤さんはアマチュア写真家で知られる。1950年に兄がのちに原発建設予定地となった旧巻町の角海浜に婿養子に行ったこともあり、53年ころから本格的に写真を興味をもち、60年ころから消えゆく運命の角海浜の集落の記録を撮り続けた。三条市の旧下田村、大谷ダムの底に沈んだ大江・大谷集落の記録写真も残しており、そんなことから県内アマチュア写真家の写真集が多い。
斉藤さんの仲間が出版した詩集や句集、古代の日本文化の役割に関する本、県内の出版物、巻町史、西蒲原土地改良史、弥彦村史、懇意にしていた故小沢昭一さんの著書などが並ぶ。スクラップブックには主に新聞や雑誌の切り抜きが張ってある。
住民運動で原発計画を阻止した旧巻町の原発建設問題を推進と反対の両方の立場から客観的に残した記録はスクラップ5冊分ある。斉藤さんが立ち上げた福井集落でほたるの里の再生の取り組み、水車工事や潟工事の記録もある。スクラップはここにしかない貴重な資料だ。
斉藤さんは、NPO法人 福井旧庄屋佐藤家保存会(平岡一郎理事長)の事務局を務める。以前から図書室をつくりたいと考えていたが、形にならなかった。斉藤さんは80歳も過ぎ、「わたしもそろそろ身支度を」と重い腰を上げた。「このまま本やスクラップを家に残しても、いずれごみになるか、どこかへいってしまうか。ここに持ってきて皆さんのお役に立てればと思って」と生かされることを願っている。
斉藤さんは毎日、旧庄屋佐藤家へ行っているが、確実に図書室を利用したい人は事前に斉藤さんに電話(090-2551-8514)する。