三条ものづくり学校に入居する女性だけのデザイン会社、有限会社エムズグラフィック(樋口由賀利社長)は、27日まで三条ものづくり学校のエントランスで「M's グラフィックのしごと展」を開いており、1993年に起業して以来、手掛けてきたプロダクトを中心に展示してこれまでの歩みを振り返っている。
同社がデザインしたプロダクトで最も有名なのは、料理研究家の平野レミさんが考案したフライパン「レミパン」。ふた付きの穴は蒸気穴となり、調味料を加えることもでき、ふたの取っ手はスタンドになってふたを立たせることができるといった特徴がある。
角利製作所の木材の質感が魅力的なかつお節削り器「鰹音(かつお)」のプロダクトデザインやロゴマーク、ステーショナリーツール「shin」のロゴマークやパッケージデザイン、道の駅「漢学の里しただ」オリジナルの食品のパッケージデザインなど一堂に集めて展示している。
社長の樋口由賀利さんは、三条市内の2つの印刷会社で働き、育児休暇をとっていたときに1社からデザインの仕事を頼まれた。すると次々と仕事が舞い込むようになり、そのまま会社に戻ることなく、印刷会社の子会社のような形で仕事を続けた。だんだん仕事が増えてひとりでこなせる量ではなくなったため、社員を雇うようになった。
起業しようと決意していたわけではなく、気が付いたら起業していた。起業しようと事業計画や資金調達に頭を悩ませている人には何ともうらやましい話だ。
女人禁制ならぬ“男人禁制”とは一度も口にしたことはないが、なぜか入社するのは女性ばかりで、一度も男性が入社したことはない。今は樋口さんを含め社員6人で会社を回している。
それまで東本成寺の2階を事務所に借りていたが、昨年春に車いすの社員を採用したこともあって1階の事務所を探していたところ今春、三条ものづくり学校がオープンし、その1階に移転した。
最近はプロダクトの立ち上げからデザイン、ロゴマーク、パッケージ、販促品などをトータルに手掛ける仕事が増えている。「困っていることはなんでも解決できる」と樋口さん。「どうやって売ったらいいか、ネーミングから、ロゴから、すべてをワンストップで引き受ける」と言う。同社ですべてを完結することで、発信源をひとつにしてディレクションをしっかり管理できる。
これまでの仕事をまとめて展示したのは今回が初めて。「自分がやってきたことを振り返り、スタッフの結束をかたくしたり、若い社員が会社の歴史を学ぶいい機会になっている」と話した。