三条ものづくり学校のエントランスにある大きなガラス窓のあるわずか8畳足らずの小部屋に三条市の布モノ作家、イカラシチエ子さん(33)が17日から正式に入居した。これで三条ものづくり学校のほぼすべてのレンタルスペースの入居のめどが立った。
イカラシさんが借りることなった部屋は本来、貸し出す予定はなかった。昨年11月23日から12月27日までエントランスで、イカラシさんが作るショップコートなどを展示した「【Expo】とイカラシ展示会」を開いている。その一角にある部屋をイカラシさんは展示準備室として無償で借り、ミシンやアイロンも入れて展示作品の製作などを行った。
イカラシさんはフリーの作家なので、三条ものづくり学校のレンタルスペースでは広過ぎるが、この部屋ならちょうどいいサイズ。事務局にぜひ貸してほしいと頼み、借りられることになった。1階のレンタルスペースは101号室で始まる連番としていたので、この部屋は「100号室」とした。
三条ものづくり学校は旧三条市立南小学校の建物をリノベーションして開設したが、この部屋は南小卒業生に聞いても倉庫になっていたことしかわからない。ただ、元児童玄関だったエントランスにあり、狭さも考えると宿直室用に設計された可能性が高い。
正面玄関からエントランスに入って左奥の角にあり、エントランスに面した壁2面には広い窓が設置され、内部が良く見える。広さは12.3平方メートルで、8畳もない。天井は上に階段があるために斜めになっている部分もあり、子どものころにあこがれた秘密基地のようなわくわくする空間だ。
イカラシさんはここで作品を作り、手打ちうどんの実演ではないが、製作のようすもオープンにする。企画、製作、販売、さらには実演とすべてのプロセスを公開し、共有する。ここに通りかかった人や立ち寄ってくれる人がイカラシさんに新たなインスピレーションを与えてくれるかもしれない。
「服を作る仕事を見てもらえるのがいい」と、このスペースにほれ込むイカラシさん。「以前からものづくりの現場を自分でも作れたらいいなと思っていて。ここは見てもらう場にぴったり」だった。
イカラシさんは自身と客が対等な立場で「誰かの名前“と”わたしの名前が並ぶものづくりがしたい」と、「と イカラシ」を名乗る。イカラシさんのためにあるような、その思いを象徴する空間ともなる。
「みんな服を当たり前に見ているけど、誰かが作っていることを忘れがち。作っている人に気づくきっかけになればうれしい」。名前が五十嵐なので、5と10の付く日を客に対応できる日にするとか、移動できる販売棚の製作など、いろんなアイデアももっている。
三条ものづくり学校では、1月から缶バッジ製作のVIVA、デザイン会社のmuku.も入居した。6月にはIT関連企業のアイエスエフネットグループの入居も決まっている。それらが入居すると空いているのは、33平方メートルの203号室1室だけとなり、それも複数の入居の希望や問い合わせがあり、すでに足りない状況になっている。
昨年4月にオープンし、当初はあまり入居がないのでと心配されたが、順調にレンタルスペースが埋まっていった。斎藤事務局長は「中心地は駐車場の確保の問題もあったし、人が人を呼ぶような効果もあるのでは」と人気を分析。入居者の募集がこれで一段落し、「入居だけでなくもっと人の出入りを増やしてにぎわいのある場所にしていきたい」と新しいステップに思いをめぐらせている。