県央地域が誇る熟練の技能をもつ職人を認定する「にいが県央マイスター制度」が10周年を迎えたことを記念するシンポジウムが30日、燕三条地場産業振興センターリサーチコアで開かれた。
この制度は今の県三条地域振興局の主導で、職人たちの社会的認知度を高め、ものづくりの技術、技能を継承し、地場産業の振興に貢献しようと2005年度に創設された。これまでに28人が認定され、うち1人が死去、この日は新たに2人を認定された。
シンポジウムのあいさつで県三条地域振興局の唐沢俊郎局長は、制度を設立した経緯を話しし、「にいがた県央マイスター制度は次の10年に向かい新しいスタートに着く」、「マイスターの協力を得ながら市町村、関係団体の皆さまと連携し、技術、技能の継承や地場産業のPRに努め、地域の振興に尽力してまいりたい」と述べた。
来賓祝辞で鈴木力燕市長は、制度がスタートした当時、県産業労働部産業政策課副参事として、にいがた産業創造機構に派遣されており、県職に就いた当時から同様の構想はあったが、「市町村の仕事じゃないのという、県がよく使う逃げ口上があった」、「産業を担当する課がいいのか、職業能力を担当する課がいいのか、というようなゆずり合いというか、押し付け合いの状況もあった」と紹介した。
「産業振興は本庁の仕事だから出先が手を出していいのかなんて話も実はあったが、そこを当時の担当者、局長たちが振興局の全体のエリアの発展のためにはマイスター制度が絶対に必要なんだと大きく貢献すると取り組んだ。歴史を知っている人間からすると画期的な英断だった」と裏話も紹介し、振興局に敬意を表した。「マイスター制度を核に県央地域の各市町村が連携しながら地域の発展に取り組んでいければ」と願った。
国定勇人三条市長代理の長谷川正実経済部長は、経済産業省の製造品出荷額の調査を示した。2001年と最新の13年の出荷額の比較で、同じものづくりのまちで知られる大阪府東大阪市は18%減、東京都大田区は57%減となっているのに対し、燕三条地域は6%増となっている。「このことから本当に力強い小さな強いものづくりのまちだということが見てとれる。このものづくりを支えているのが、まさに中小企業であり、そこで仕事をする県央マイスターの皆さん、あるいは職人」で、県央マイスターには「卓越した技術、技能、技と心を次の若い世代に引き継いでいっていただけますよう心から願う」とした。
新しく県央マイスターに加わる金型研磨の今井道雄さん(66)=燕市=と仏壇製作(木地部門)の長谷川美博さん(61)=燕市=に唐沢局長から認定証を授与。今井さんは「これからも金型を磨き、自分を磨きたい」、長谷川さんは「これからも仏壇の木地作りに専念していきたい」とあいさつした。
このあと長岡技術科学大学の前学長でもある新原皓一名誉教授が「地域産業の活性化、それがマイスターの最も大切な役割です」のテーマで基調講演を行った新原名誉教授と3人のマイスターをパネリスト、燕市産業史料館の斉藤優介主任学芸員をコーディネーターに「『技』の継承による地域振興」のテーマでパネルディスカッションを行った。