燕市産業史料館が館内の「伊藤豊成コレクション・世界のスプーン」に常設展示している故伊藤豊成氏が収集した世界のスプーン5,000本が、寄託から10年の満期を迎えたため、1月30日、新たに10年間の寄託更新の調印式を行った。
伊藤豊成氏は1915年に愛知県名古屋市に生また。医師で66年に東京都世田谷区三軒茶屋に伊藤医院を開院した。一方で絵画をたしなみ、60年に銀座で偶然見つけたスプーンが気に入り購入してからスプーンコレクションを始めた。「世界のスプーン展」を開くなどし、01年に86歳で死去。06年に約5,000本にものぼるスプーンコレクションを同史料館に寄託した。
同史料館では寄託を受けて常設展示室の設置を検討し、その計画が膨らんで新館を建設し、新館に「伊藤豊成コレクション・世界のスプーン館」を設置し、コレクションを展示している。
調印式には、いずれも医師の豊成氏の二男邦成氏(67)と三男祐成氏(64)が史料館を訪れ、祐成氏が鈴木市長と調印を交わした。
鈴木市長は、見れば見るほど貴重なコレクションであり、世界の食文化の歴史やデザインの変遷も学ぶことができ、「産業史料館にとっても目玉展示のひとつと思う。それを再びわれわれに託していただけたということは洋食器の産地たる燕市として誠に光栄」と感謝した。
祐成氏は、3年ほど前に高校時代の友人を10人ほど引き連れて同史料館を訪れたと言い、「手前みそだが、すばらしいな、父がこれだけ集めるのにどれだけの時間とお金を要したのかなといろいろ考える」。燕市との関係は96年に同史料館でコレクションの企画展を開いたのが始まり。「燕市と伊藤コレクションの関係は20年になる。こうして新たに寄託ということでお願いでき、これからもこの先10年、20年とお世話になると思う」と述べた。
邦成氏は、「燕市が一生懸命、きれいに管理してくれることを感じ、非常にうれしい」と言い、子どものころに豊成さんはスプーンを買って来るたびに見せてくれ、「せっかくだから見るだけ見てあげようという感じだった」と笑わせた。
寄託更新を記念して同史料館は5日から21日まで企画展「美しきスプーンの世界」を開き、コレクションのなかから美しスプーンを集めて展示している。