三条ものづくり学校に入居する服飾作家と空間デザイナーの2人が、同校エントランスでトイレットペーパーを使ったインスタレーション「織りなす空間」の制作を企画。18日の完成に向けて形を変えていく制作のプロセスも楽しめるユニークな空間芸術の試みだ。
2人は三条市に住むイカラシチエ子さん(33)と渡辺長利さん(34)。イカラシさんは文化服装学院ファッション工科専門課程アパレル技術科卒業。フリーランスで国内外を問わず衣装家、縫製技術者として活動した経験があり、「 と イカラシ」名義で13年から三条市を拠点に活動している。
渡辺さんは長岡造形大学造形学部環境デザイン学科卒業。国内外のホテル、複合施設などの企画、計画、設計に携わり、12年から地元三条市に活動拠点を移し、建築物に限らず様々な空間の設計・計画、デザインを手がけており、「wao」として独自の活動も行っている。
2月末から制作を始めた。渡辺さんが約4メートル四方の木枠を作り、玄関を入ってすぐ右の展示スペースに使っているエントランスの天井から下げた。木枠から2.3メートルの長さで単純にトイレットペーパーを垂らした。使ったトイレットペーパーは実に26ロール。これだけでも圧巻で、すでに作品として存在感がある。
しかし、構想ではこれはまだ縦糸。そこに横糸となるトイレットペーパーを組み合わせて空間を“編む”。接着剤は使わず、トイレレットペーパーだけで中に2、3人が入れる空間を作り出す。最後に中に照明も仕込む。イカラシさんが与えたお題は「かまくら」。事前に模型を作り、2人で完成のイメージを共有している。どんな作品に変わっていくかはこれからのお楽しみだ。
2日の段階では、編むための準備として渡辺さんが新聞を丸めた棒でガイドを作っていた。翌週からイカラシさんが中に入って編む予定。30日で展示を終わる。
2月29日に制作をはじめ、3月18日に完成。完成の18日は午後6時半から2人でギャラリートークを行い、27日は午後2時から5時まで染色を行う。染色は下に絵の具を置いてトイレットペーパーが自然に吸い上げる力でと考えているが、具体的な手法は検討中。タイトルの「織りなす空間」の立体文字は入居者が3Dプリンターで作ってくれた。
三条ものづくり学校では、会場のエントランスでクリエーターやアーティストの作品展示を行っているが、暖房がなく、2、3月は寒いため、展示は行わない。2カ月間、スペースを空けておくのはもったいないと、ことし1月に入居したイカラシさんが昨年5月に入居した渡辺さんに「かまくら作りしませんか?」ともちかけた。
渡辺さんは、昨年12月に三条ものづくり学校で開かれたクリスマスコンサートにあわせてクリスマスツリーをイメージしたオブジェを制作しており、イカラシさんも気になっていた。「何か考えてくれないかとむちゃぶりされて」と渡辺さんは笑う。
イカラシさんは昨年、新潟市で開いた個展で、ワイヤトルソーにトイレットペーパーで作ったドレスを着せるインスタレーションを行った経験がある。「かまくら」のお題に渡辺さんは、かまくらを編むというアイデアを提案した。
イカラシさんは「雪遊びがしたかった。渡辺さんがクリスマスで作った作品が心に残っていた」と言う。そばを人が通ると風でトイレットペーパーが揺れる。外からと中からでは作品の見え方がまったく異なる。温度や湿度も作品に影響するはずで、渡辺さんは「五感で楽しんでもらいたい」。
無料でいつでも見られるので、作品が変わっていくようすも見てほしいとふたりは足を運んでくれるよう期待している。作品を中に入って鑑賞できる空間開放日を設ける。開放日は19日から21日までと26日から28日までのそれぞれ3日間、いずれも午前11時から午後5時まで。