燕市内の研磨職人でつくる親ぼく団体「燕磨(えんま)の会」(山崎正明会長・会員18人)は6日、燕市の合併10周年記念式典を前に市庁舎正面玄関にあるステンレス製の切り文字をボランティアで再研磨し、ぴかぴかに磨き上げた。
この切り文字は2013年5月に開庁した新庁舎に設置された。正面玄関を入る手前の右の壁、高さ3メートルほどの所に市章とともに「燕市役所」の4文字と「Tsubame City Office」の17文字が取り付けてある。
そのときも燕磨の会の会員がそれぞれ文字を持ち帰って磨き、ミラー(鏡面)仕上げを施した。燕の研磨職人の誇りを示そうと、表面はふだんの仕事では手掛けないほど高い平滑度で仕上げた。
→燕市の研磨職人の技術の粋と心意気を…それから3年近くたち、腐食には至っていないものの、さすがに汚れが目立ってきた。燕市は間もなく合併10周年。19日に燕市文化会館で合併10周年記念式典が行われるのを前に、切り文字を磨き上げて輝きを取り戻し、新たな10年に向けてスタートを切ってもらおうと再研磨を企画した。
青空の広がる春本番の陽気に恵まれ、午前8時から集まって準備を始め、9時から正午前まで研磨作業を行った。会員は18人のうち12人が参加し、研磨の技を学ぶ燕市磨き屋一番館の研修生3人も参加した。
プラスチックのコンテナを重ねて足場を作り、“小口”と呼ぶ文字の切断面をタケの割りばしでこすって汚れを落としたあと、手持ち式のハンドバフで表面を磨き、液体の研磨剤を布に付けて磨いたら完成だ。
研修生から仕事を覚えてもらおうと、前半は研修生から多く作業してもらった。ハンドバフは研磨職人でも誰でもできるというわけではない。仕事では固定したバフに磨く物を当てて磨くのがふつう。バフの方を動かすのは小さなものの内側を磨くときなどに限られ、経験のない職人も多い。
バフの回転方向を考えて作業しないと、バフがひっかかって切り文字をはじき飛ばしたり壊したりする恐れがある。そのためふつうとは逆にバフのある方を下に向けて研磨しなければならい部分もあり、熟練が必要だ。
昨年6月から磨き屋一番館に通う研修生、長岡市中之島地区に住む吉田光さん(34)は子どもを連れて見学に訪れ、長男の小学校1年生兼倉くん(7つ)も研磨作業をちょっぴり手伝った。
光さんは結婚記念日に夫からプレゼントしてもらったステンレスの樽マグが燕市で研磨されたものだったことから、磨き屋一番館の門をたたいた。卒業したら燕市内で研磨業に就きたいと考えており、「もともと、ものづくりがしたかった」と言い、切り文字を磨く大先輩の勇姿に「かっこいい」とにっこり。「研磨の技術を子どもたちに伝えていくのがわたしたちの使命」と話した。
再研磨した切り文字は、開庁のときの輝きを取り戻すどころか、あらためて磨いたことで当時よりもきれいになったのではというほどの出来栄えで会員も大満足だった。
ちょっとだけ磨きを手伝い、最初から最後まで研磨のようすを見守った鈴木力市長は「見違えるように輝きを増してまさに輝くまち燕市の象徴がまたよみがえった」、「細部にこだわる皆さんの職人魂を拝見させていただいた」と感謝し、会長の株式会社山崎研磨工業の代表取締役、山崎正明さん(58)は「また数年後、頑張ってやりましょう」。みんなで円陣を組んで一本締めを行って締めくくった。
鈴木市長は五輪の年に再研磨してはと提案していた。また山崎さんは手早くを作業を進めたようすに「簡単そうに見えるくらい上手」と会員の技術の高さに下を巻いていた。