三条市若手芸術家支援事業として12日から16日までの5日間、三条東公民館で開かれている鶴巻貴子銅版画展の関連イベントとして13日、ワークショップ「エッチングプレス機で版画を作ろう」が開かれ、5人が版画の魅力を体験した。
三条市の銅版画家、鶴巻貴子さん(37)の個展。ワークショップは13、14の2日間行い、いずれも定員通り5人の参加申し込みがあった。
鶴巻さんの指導でエッチングプレス機を使った版画を体験してもらおうというもの。銅版画にまったくなじみのない人が多いだろうが、40年ほど前、しばらくの間、中学校の美術の授業で銅版画が行われたことがある。今回、ワークショップに使ったエッチングプレス機も当時、使われたものを第一中学校から借りた。
ワークショップでは、銅よりも加工しやすい12×16センチの塩ビ板を使った。ニードルで表面を刻んで線を描くドライポイントという技法のほか、希望者は鋼砂と水性ニスを混ぜたものを載せて面や濃淡を表現できるカーボランダムの技法にも挑戦した。
参加者は下絵や写真を用意し、それを塩ビ板に転写して版制作。版ができてインクを載せたらエッチングプレス機の出番だ。鉄の板とフェルトの間に版を置いて湿らせた紙を載せ、圧力をかけたローラーを回転させ、版を移動させるとインクが紙に転写されるという仕組みだ。
エッチングプレス機は会場に展示しているので、作業を始めると来場者も囲んで作業に見入った。参加者は慎重にローラーを回転させ、ゆっくり紙をはがして作品が姿を現すと「おー!、「すごい!」とあちこちから声が上がり、制作者は笑顔いっぱいだ。
元小学校教諭の三条市に住む村田洋子さん(68)は、小学校で指導した図画、工作も好きで、木版画の経験はあるが、銅版画はやったことがない。「若手のかたが地元で頑張っていることにも興味を引かれて」参加した。
ドライポイントで女性、帽子、花と好きなものを組み合わせた作品を制作。カーボランダムでもハクチョウを制作し、水面にカーボランダムならでは柔らかな表現を生かした。
「こんなんでいいんだろうかとどきどきして、刷り上がったときがいちばんうれしかった。作り出すということは、すごく喜びだと思う」と言い、鶴巻さんがいつでもアトリエのエッチングプレス機を使ってほしいと話していたことから「また、こんな機会に恵まれればうれしい」と版画の魅力にぞっこんだった。
鶴巻さんは、2014年にベルギーに短期留学して指導を受けた銅版画家マルニクス・エバレート(Marnix EVERAERT)氏が昨年、来日して国内で行ったワークショップでアシスタントを務めた。それは専門に勉強している人を対象に3日間にわたる本格的な内容で、初心者を対象に指導したのは今回が初めてだ。
鶴巻さんは「時間がなくて駆け足のワークショップだったが、皆さん上手にやってくださって、個性も豊かなすばらしい作品をできたと思う」と参加者の頑張りに感謝していた。