熊本地震の被災地支援として全国市長会(会長・森民夫長岡市長)が要請した派遣の第1号として22日、燕市職員2人が派遣された。
派遣職員はいずれも防災課で、主幹の十河(そごう)浩さん(55)と主事の菊地貴之さん(26)。午後4時から市役所正面玄関前で出発式を行い、防災課を中心に職員数十人が集まった。
鈴木力市長は「被災者はわれわれ燕市民だというくらいの気持ちで心に寄り添いながらしっかりサポートしてほしい」と求め、十河さんに燕市から10万円、燕市職員から20万円の義援金を手渡した。
十河さんは「燕市民を代表するというような気持ちで被災者の身になって心のこもった支援を一生懸命やってまいります」とあいさつし、窓に「災害支援 職員派遣 新潟県燕市」とある紙を張ったバンの公用車に乗り込み、職員の拍手に送られて出発した。
派遣先は阿蘇郡南阿蘇村で、避難所運営の支援にあたるが、避難施設は未定。派遣期間は1カ月を目途とし、1週間単位で職員を交代させる。
全国市長会は20日、全国の市区長に対して被災市町村への職員派遣を準備するよう通知した。燕市はその日のうちに2人の職員を派遣できると回答したこともあってか、全国市長会による派遣第1号となった。
十河さんは自衛隊高田駐屯地の第二普通科連隊の副連隊長で退官して、この4月から燕市の任期付き職員となっている。燕市は災害経験が少ないこともあり、初めて経験のある自衛官をスペシャリストとして採用した。
十河さんは昨年9月の御嶽山噴火や東日本大震災をはじめ、これまで全国各地で発生した大規模災害や自然災害で被災地に入り、行方不明者の捜索や救助、救援活動に取り組んだ。第二の人生をスタートして1カ月足らずで、「燕市職員」という新たな立場で被災地に立つことになった。
「被災地のニーズに応えるにはわたしの経験が生かせる」と十河さん。職員派遣の話が出たときも「まわりの顔を見たら、わたしのほうを見てくれていた。困ったときはわたしに聞けばわかると思ってくれていると感じ、それだけでもここに来た甲斐があるなと思う」と与えられた役割に貢献できることを喜んだ。
原則は1週間で派遣を交代するが、十河さんについては、あるていど仕事の形が決まってローテーションがうまくいくようになってから帰ることになると思われ、おそらく1週間で帰ることはない。
また、被災地からの支援を受けないよう「自己完結型」にこだわる。全国市長会には自己完結で準備していると答え、感謝されたと言う。「この車1台でトイレから食糧から全部、積んでる。被災地にはご迷惑をかけないのが原則。自衛隊は自己完結能力というのを常に考えていた。それに33年間、つかってましたから。体にしみついてる」と話した。