手描き染めに出会って10年あまりになる燕市の作家、中村清子さん(38)は、27日まで燕市吉田旭町1、「Watanabe Garden 蔵」で初めての個展を開いている。
布やガラスにも着色できるアメリカ製の染料を使い、下処理をせずに直接、フリーハンドや型紙を使うなどして絵を描くように手軽にできる手描き染め。その手法で生まれたタペストリー、傘、扇子、ワンピースなど約40点を展示する。
傘の手描き染めした「ワンブレラ」は注目を集め、中村さんの代表作になった。タペストリーは十日町市出身の植物染め作家、星名康弘さんの手によるあい染めとのコラボレーション。ワンピースはチンゲンサイの根元の近くを切ってスタンプ代わりにし、そこに染料を塗ってバラの花を表現するというアイデアがおもしろい。
中村さんは2005年春、体調を崩して仕事を辞め、気持ちを切り替えようと出掛けた東京での女性との出会いから「モダーン手描染アカデミー」を見学し、それから毎月、東京へ通って学ぶようになった。
5年前から新潟市内のレンタルスペースなどでワンデーのワークショップを行うようになって講師を務める機会が増えている。2年前に書家の石崎甘雨さんと新潟市旧齋藤家別邸で二人展「甘い雨と清い傘展」を開いた。中村さんが手描き染めを教えた人や作品のファンから、中村さんの作品をまとめて見てみたいという声があり、初めての個展を企画した。
会場の「Watanabe Garden 蔵」は、隣りにある渡辺医院の院長の奥さんが経営する。渡辺医院は中村さんが産声を上げた病院。「わたしの生まれた場所で再スタートできればと思った」。
手描き染めとの出会いを自分で撮影した写真とともにつづったフォトブックを制作し、会場で見てもらっている。父の大橋正明さん(74)、兄の保隆さん(39)はともに鎚起銅器職人。それぞれが作った花器を会場に飾り、家族のものづくりの系譜を象徴し、原点に戻ることで新たな出発をイメージさせる個展となっている。
会場の営業日は火曜から金曜までの平日と第2、第4土曜、営業時間は午前10時から午後4時まで、ランチセットは予約が必要。問い合わせは「Watanabe Garden 蔵」(電話:0256-78-7785)へ。