社会福祉法人吉田福祉会(細貝好美理事長・燕市吉田大保町)は1日、燕市粟生津の名門「鈴木家」の跡地に建設した小規模多機能センターと認知症のグループホームの機能を備えた「長善のさと」とお年寄りが共同生活する「シェアハウス長善」の竣工式が2日、同施設で行われた。
燕市は、第6期介護保険事業計画に基づく介護保険事業の基盤整備に伴い、地域密着型施設建設事業者を公募した。吉田福祉会はkれに選定され、市の介護基盤整備事業補助金を受けて施設を建設した。
「長善のさと」は木造平屋建てで延べ床面積506平方メートル。小規模多機能センター(登録定員24人、うち宿泊定員7人)と認知症のグループホーム(入居定員9人)。「シェアハウス長善」は男女に分けて2棟(各入居定員4人)あり、いずれも木造平屋建てで延べ床面積は合わせて198平方メートル。
工期は昨年10月16日からことし5月31日まで、総事業費は1億9536万円でうち市補助金が7396万円、借入金6000万円、自己資金6142万円。週明けの事業を開始し、1日までに小規模多機能センターは定員24人に対して15人の登録があり、グループホームは定員通り9人が入居。シェアハウスは6月中に1棟に2人ずつの入居が決まっている。
2082平方メートルの敷地は、粟生津に私塾「長善館」を創設した鈴木文台(1796-1870)の本家があり、長らく空き家になっていて燕市の空き家バンクに登録されていた。それを吉田福祉会が土地所有者から購入した。
設計では、鈴木家にあった石碑と土蔵はそのまま生かし、庭も小さくして残すことにした。石碑は「鈴木順亭碑」とあり、福山藩の儒者、小島知足(ちたり)が書いた文台の兄、順亭の一代記を刻む。
土蔵は職員の休憩室や倉庫に利用する。施設のロゴも鈴木家の家紋「鷹の羽(たかの)」の中心にハートをデザインした。玄関には鈴木家に残っていた大そろばん、火鉢、掛け時計などを展示。近くの長善館史料館から借りた鈴木家で文化勲章を受けた鈴木虎雄(1878-1963)の書を館内に展示するなど、鈴木家とのゆかりを色濃く伝える工夫を凝らした。
竣工式には70人が出席。細貝理事長は式辞で、同施設の完成で燕市吉田地域4小学校の全小学校区に吉田福祉会の小規模多機能センターが整い、「より地域に密着した介護サービスが可能になった」と喜んだ。
グループホームで認知症になって介護が必要になっても住み慣れた地域で暮らせる、ひとり暮らしの不安がある人もシェアハウスで共同生活でき、施設は鈴木家の歴史的な文化遺産を少しでも生かす考え方で整備。「ご利用者の皆さまが住み慣れた地域で自分らしい生活を送ることができるよう支援したいとした。
来賓の鈴木力市長は祝辞で、燕市空き家バンクに登録されていた物件と吉田福祉会との間で「お見合いが成立」し、「こういった形でご利用いただき、燕市としては二重の喜び」と述べた。また、有限会社田中栄一建築設計事務所、米山建設株式会社に感謝状を贈った。