10月8日から10日まで新潟市中央区・NSG学生総合プラザSTEPで開かれる第70回日本人類学会大会に頭蓋骨から復元された復顔が展示される。そのうち、長岡藩主牧野家の墓所から出土した六代藩主、牧野忠敬の頭蓋骨の復顔を制作している復顔師、戸坂明日香さん(32)=東京都荒川区=は、制作に必要な資金をクラウドファンディング「READYFOR(レディーフォー)」で募っており、支援を呼びかけている。
あわせて比較対象として宮城県の亀岡遺跡から出土した中世(鎌倉〜室町時代)の子どもの復顔像も作成する。クラウドファンディングは7月14日が締め切りで目標金額134万円に対し、6月28日午後9時までに23人から合わせて47万9千円の支援が寄せられている。
支援者へのリターンは3千円でサンクスメール、1万円で特製・復顔プロセス手ぬぐい、3万円で復顔の制作過程冊子とそこに名前の記載、6万円で復顔師の手描き似顔絵、7万円で実寸大頭蓋骨模型、10万円では戸坂さんによる出張講演も。
また、近くリターン品に、喉仏模型を追加する。椎骨のひとつ、軸椎が座禅をしている仏のような形をしていることから喉仏と呼ばれ、その模型。ストラップやネックレスに加工できる。
戸坂さんは群馬県出身で東京藝術大学大学院の美術解剖学で博士号を取得。復顔師を務める一方、2013年から日本科学未来館に勤務している。
友人の死をきっかけに「どうして人は死んでしまうのだろう」という問いを抱き続け、答えを探る手段を芸術に求め、芸大彫刻科で「死」をテーマに彫刻作品を制作。その後、人間をより深く知りたいと同大学の美術解剖学研究室に移籍し、骨や筋肉などの人体構造を学び、博士課程に在籍していたときに法医人類学者と出会ったことをきっかけに「復顔」を始めた。
復顔とは、人間の頭蓋骨をもとに顔を復元し、生前の姿をよみがえらせるもので、法医学にも使われる。戸坂さんはこれまでに博物館や警察からの依頼を受け、縄文時代から現代までさまざまな年代の16個体の頭蓋骨を復顔した。
今回は第70回日本人類学会大会の主催者から復顔の依頼を受けた。戸坂さんのほかにも5人が復顔を制作して展示し、「米百俵」のエピソードで知られる長岡藩士、小林虎三郎を復顔する人もいる。
戸坂さんは2013年に国立科学博物館で開かれた江戸人展で牧野家の5代藩主、牧野忠周の復顔を制作しており、今回の第70回日本人類学会大会では、ほかの復顔師が牧野家の十代とその実兄に復顔を制作することになっている。
戸坂さんは復顔の依頼を受けたものの、予算では復顔の原形しか作れない。戸坂さんの復顔作業は、原形から型を取り、そこにFRP樹脂を流し込んで固め、彩色を施し、義眼を入れて完成する。そのために必要な費用をクラウドファンディングでまかなうことにした。
戸坂さんは、海外に比べて日本の復顔研究は研究者もデータも非常に少なく、日本人と西洋人の骨格は異なるため、手法自体も日本人の骨格に適した方法を検証する必要があると考える。
復顔研究の発展は、事故や病気で顔を損失した人の顔面形成手術において医師と患者のコンセンサスを得るための手引きとしても活躍することが期待されており、「まだまだその可能性を秘めている復顔研究の次への一歩となるように」と支援に期待している。