リオデジャネイロ・パラリンピックに向けて25日から燕市で事前合宿しているモンゴルのパラアーチェリー選手団と地元の県立吉田高校アーチェリー部は29日、アーチェリー部品を作っている有限会社上村製作所(上村順一代表取締役・燕市花見)を工場見学した。
28日の合同練習は、モンゴルの選手団がパラリンピック出場選手3人を含む選手6人とコーチ2人の8人、アーチェリー部は部員約40人のうち30人ほどが燕市のマイクロバスに乗って上村製作所を訪れた。
同社はNC加工を中心と金属加工メーカーで、アーチェリー部品は数ある同社が製造する製品のひとつ。20年ほど前からアーチェリーの矢の先端に取り付ける的に刺さるためのポイントやその反対側の後端のノック、さらに弓を安定させるスタビライザーの先端に取り付ける重りをなどを生産し、国内のアーチェリーメーカーに納品している。
モンゴル選手団も高校生も、同社工場内に並べられたアーチェリー部品に興味津々。とくにモンゴル選手団はステンレスで作られた製品の精度の高さに注目した。プロ選手が使うアーチェリー用具は米国など海外製品が一般的で、日本製はメジャーではない。
代表取締役の上村順一さん(46)は工場内を案内するつもりだったが、モンゴル選手団の質問攻めに案内どころではなかった。モンゴル選手団は、この形のポイントはもう作っていないのか、モンゴルで販売先はないのか、どうすればモンゴルで入手できるか、参考にしたいのでカタログを送ってほしいなど、質問が止まらない。
さらに、この長さで100グラムの重さで作るのは可能かなど、オリジナルのポイントを作ってほしいという要望まであり、プロ選手の道具に対するこだわりの強さやアーチェリーにおける道具の重要性を示していた。
高校生も同様で、さまざまな部品を手にとって確かめ、NC旋盤による金属加工の現場も見学し、自動化された機械群に「めっちゃ勉強になるわ」と目を輝かせていた。
アーチェリー部部長の3年生番場健太さん(17)は「いつも使っているパーツがこんな身近な所でも作られているのを知ることができて良かったし、自分たちの知らないパーツも作られていた」とたくさんの発見をしていた。
モンゴルのパラアーチェリー協会会長で北京パラリンピック金メダリスト、バータルジャブ・ダンバドンドグさんは「今までできたものを使う方でやってきたが、実際に生産する現場を見学できて良かった。技術的にも素晴らしいものだった」と感心していた。
上村さんは高校生部員に「こういうものを作ってほしいというのがあれば作ります。それでぜひ東京五輪でいい点数を取ってほしい」と東京五輪の代表候補たちに同社の全面的な支援を約束した。
また、同社にとってアーチェリーに限らず工場見学はほぼ初めての経験。「いい経験で、すごく楽しかった」と上村さん。「ウチで太鼓判を押せるような立派なもの、選手が安心できるようなものを作れれば選手の力にもなるはず」とモチベーションを上げていた。
また、この日は磨き屋一番館の見学、研磨体験も行った。