新潟県中小企業家同友会三条支部(山田泰士支部長・37人)は22日、8月ミニ例会を開き、障がいのある子どもたちの職場体験を通して、地域の人々が立場をこえてつながりを再構築していく活動を行う「ぷれジョブ・ひまわり」事務局の伊藤博之さん(49)=加茂市=が「ぷれジョブが教えてくれるもの〜”生きづらさ”を解消するために〜」のテーマで話した。
同友会は、中小企業経営者の全国組織で、三条支部は新潟県中小企業家同友会の9支部のうちのひとつ。通常の例会では、会員同士が学び合い、互いの経営の在り方の意見交換などのグループ討論を行っている。ミニ例会は、通常とは違った内容で、会員などが同じ立場の経営者としての事例報告を聴いている。
ミニ例会には会員24人が参加。山田支部長はあいさつで、障がい福祉施設で起こった殺傷事件にふれ、この事件を通じて人の価値とは何かと考えたと言い、同友会では「人を尊重する」とよく言われるが、人を尊重するとは何なのかを伊藤さんのぷれジョブの活動から学び取る必要がわれわれにあると期待した。
三条支部会員の伊藤さんが報告者となり、なぜぷれジョブの活動にかかわったてきたかなどの自身の生い立ちと、「ぷれジョブ」の活動を紹介。「そのなかで皆さんが感じるところや、企業としてかかわるところがあれば幸い」と始めた。
伊藤さんは、こだわりが強いところなど小さいときにはアスペルガー症候群的な傾向があったかもしれないと自身について話し、幼稚園、小学校5年生、中学3年生と3度いじめに遭い、「それだけ自分も変わっていた特徴のある子だったんだなと思う」。
その小学校5年生が人生のターニングポイントと言い、いじめがひとつのきっかけになり、いじめによって人の相談を受けるような何かがしたい、カウンセラーをしてみたいと考えたという。
大学で障がい児教育を専門とし、特別支援学校の教員免許を取得したが、自信がなくてその道には進まず、三条信用金庫に10年間、勤務した。そこで上司に、仕事人としてのスタンスや人生の切りひらき方を育ててもらったとし、「人との出会いが成長につながっていく。それは、健常者といわれている人も障がをもつ人も一緒」と話した。
仕事がうまくいかなかった時期に、誰のためにもなっていないと人生を考え直した。人生は一回きり。いつ死ぬかは誰にもわかず、人生の中でやりたことを考えた。ひとつは音楽活動、もうひとつは障がい者にかかわることだった。
考えていると実現してくるもので、仕事で訪問していた家に自閉症の子どもがいて、障がいをもつ子どもが仕事の体験をする活動があり、地域の会社で働く体験ができる事業に取り組む「ぷれジョブ」の話を聞いた。伊藤さんは、これまでの経験をいかして、企業と生涯をもつ子どもとの「つなぎ役になれるかな」と思い、2011年に三条、加茂で活動する「ぷれジョブ・ひまわり」設立に参加したと経緯を話した。
伊藤さんは、「自分の人生のライフワークとしてかかわっている間に、町の風景になっていくのがいい」と言い、おのずと助け合える地域社会ができる時代が到来し、最終的にはぷれジョブの活動がなくなるような社会になればいいと述べた。
ぷれジョブは2003年に岡山県倉敷市の中学校区で始まった課外活動。障害のある子どもが地域で職場体験することで、地域の構成メンバーとして大切にされて生きていける基盤づくりをすることを目的とする。
小学5年生から高校3年生の障がいのある子どもを対象に、1回1時間、地域の企業とボランティアのジョブサポーターが支援して職場体験を半年間、続ける。
障害のある子どもの就業が最終目的ではなく、子どもの勤労観、職業感を育み、地域の企業、住民、学校、保護者とのつながりを広げ、豊かな地域づくりの地域づくりを目指す。