旧西蒲原郡粟生津村(今の燕市)出身の彫金作家、亀倉蒲舟(ほしゅう)氏(1907-97)の孫で現代アート作家の亀倉芸(のり)さん(56)=に新潟市西区=は3日、ことし6月に蒲舟氏の生まれ故郷の粟生津に開設された小規模多機能センター・認知症のグループホーム「長善のさと」に蒲舟氏の作品を寄付した。
寄付した作品は額装の「鯉」(31×40cm)。銅板を彫金して蒔絵(まきえ)のように全体を金粉で覆い、中央の白いコイには銀粉を載せた。製作時期は明らかでないが、芸さんによると晩年の作で、白いコイは縁起物とか。
3日、同施設を訪れた芸さんは、施設を運営する社会福祉法人吉田福祉会(燕市吉田大保町)の細貝好美理事長に作品を手渡し、細貝理事長は芸さんに感謝状を贈った。同施設では小規模多機能センターの居間に展示して利用者に見てもらう考えだ。
蒲舟氏は粟生津村に生まれて2歳で旧黒埼村木場(今の新潟市西区)に移った。日本を代表する彫金作家で日展審査員を務め、紺綬褒章を受章している。蒲舟氏の父、宇之七氏は粟生津村にあった私塾に学んでいる。
粟生津に住む親せきから芸さんに作品を同施設に寄付する提案があり、それを受けて寄付した。芸さんは「曾祖父も学んだゆかりの地に作品を寄贈できることがうれしい。皆さんに喜んでいただけたら祖父も喜ぶと思う」。白いコイは「風水的にもよろしいらしい。とてもこの施設にもいいと思う」と話していた。
また、蒲舟氏の長男で芸さんの父、彫鍛金作家亀倉康之氏(1934-2012)が死去した翌年、康之氏の妻は蒲舟氏と康之氏の父子作品4点を燕市に寄付している。