「燕三条 工場の祭典」の公式レセプション「奏でる工場」夜勤編が8日夜、株式会社テーエム(三条市金子新田・渡辺竜海社長)で開かれ、県内外から訪れた100人余りが、プロギタリスト坂本夏樹さんと燕三条の工場の担い手6人がドラム缶を楽器にした工場の音楽ライブを楽しんだ。
「奏でる工場」は、夜勤編と翌9日午前11時からの日勤編の2回公演。プロギタリストの坂本さんを囲み、近藤製作所、テーエム、ニシムラデザイン、樋口工作所、ヤマトキ製作所、レジエの燕三条の6つの工場の経営者などがつくるモノづくり集団「DEN」がドラム缶やチェーンなどを楽器にして共演した。
8日は暗くなり始めた午後6時、残業しているかのように明かるい金属表面処理のテーエムの工場は、家族連れや学生、若い人から年配のまで幅広い年齢層の100人余りが集まった。
チャイムがなり「業務連絡、夜勤の時間になりました。作業者は所定の位置についてください」とアナウンスが流れ、坂本さんをはじめ、作業着を着た「DEN」のメンバーが登場。坂本さんのギターとボーカルにあわせ、ドラム缶を叩いて演奏が始まると、その迫力と一体感に「わー、すごい」と観客から歓声があがった。
昭和の時代に建てられた工場の中、「経営理念」や丸い時計、10月のカレンダーが壁にかかり、天井はクレーンや針金、棚には会社の作業箱、見たこともないような機械、むき出しの鉄骨、床のコンクリートなど工場関係者以外には、ふだん目にすることのない光景のなかで行われるライブは、プロモーションビデオの中に入り込んだような不思議な感覚だ。
観客とともに演奏したり、火花の演出があったりと、約1時間のステージで盛り上げた。
坂本さんの出演がきっかけで「工場の祭典」に初参加という東京都の今上杏莉さん(27)は、「すごい興奮しました。この場でないと聴けない音楽。ひとつのものをつくろうという思いが伝わり、感動しました」。
一緒にライブを楽しんだ十日町市の古沢美香さんは「さっき(今上さんと)知り合ったばかり」と言い、坂本さんの以前のライブのMCで「諏訪田製作所のつめ切りが気に入っている」と話したことがきっかけで、同社での爪切り購入のために三条市を訪れたこともある。
今上さんは1泊し、古沢さんはいったん十日町市に戻り、翌9日も燕三条工場の祭典を楽しむと話していた。