新潟県央工高で公立高校で初めてのB型肝炎患者講義 (2016.11.1)

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新潟県央工業高校は、このほど人権教育・同和教育講演会を開き、公立高校では初めてとなる「B型肝炎患者講義」を実施。国の集団予防接種によってB型肝炎に感染し、差別や偏見を受けたり、「いつ死ぬかわからない」といった不安や苦しみを抱える患者3人の声を、生徒や職員約600人が聴いた。

新潟県央工業高校で行われた人権教育・同和教育講演会のB型肝炎患者講義
新潟県央工業高校で行われた人権教育・同和教育講演会のB型肝炎患者講義

大湊卓郎校長が、「人権について学ぶというと難しく聞こえるが、お互いを認め合う心を育てるということが、いちばん大事なところ。しかも学ぶと言っても知識として学ぶだけでなく、しっかりと心で感じることが大切」。今の社会では、さまざまな人権に関する課題があるが、感染症患者へのいわれのない差別や偏見は大きな問題とし、「われわれはまだ知識もありません。正しい知識を身につけるとともに、お話を聞いたことをよく自分の心でとらえて考える機会にしてほしい」と生徒らに呼びかけ、開会した。

全国B型肝炎訴訟新潟弁護団の弁護士が、「どういう病気か正しい知識を知ってもらいたい。患者さんたちがどういう思いで生活しているかを知ってほしい」として、B型肝炎について症状や歴史などをていねいに解説し、患者3人が順に体験を話した。

肝炎ウイルスについての説明では、日本で350万人もが感染しているが、いろいろな型があり、病状や治療法がまったく違う。B型は110万から140万人といわれる。

影響を受ける肝臓は、アルコールを分解する臓器と知られるほか、500以上の機能があるといわれ、心臓と同じくらい生きていくうえで重要な役割を果たしている。肝炎ウイルスに感染するとウイルス性肝炎という症状が起き、慢性肝炎、肝硬変と進行し、さらに悪化すると肝がんになるが、突然がんを発症してしまうこともある。

肝臓を悪くするのは酒の飲み過ぎというイメージをもつ人がいるが、アルコールを原因とするのは、肝硬変患者のうち14.3%、肝がん患者では7.2%と言われ、ウイルスが原因というのは、肝硬変患者で75%、肝がんは85%にのぼり、アルコールよりウイルスが原因となって病気になる人が非常に多い。

感染は予防接種が原因でたくさんの人に広まった。1本の注射器でたくさんの子どもたちに注射したことによるもので、今は注射針は使い捨てだが、当時は何人も使いまわすことが一般的だった。

国は注射針を使い回しによる肝炎感染の危険性を知りながら、子どもたちの安全より経済性や効率性を重視し、1988年まで放置。28年前まで誰が感染してもおかしくない状況が続いた。

赤ちゃんはウイルスを排除できず、「キャリア」となってウイルスを持ち続けたままおとなになる。キャリアの女性が出産すると、血液を通して赤ちゃんも感染し、感染が拡大した。今は妊婦になると必ず検査を受けて赤ちゃんへの感染を防げる。

国が誤り認めたのはわずか5年前の2011年。新潟を含む感染被害者が裁判を起こし、ようやく国が謝罪したが、謝罪しても患者の体が元に戻るわけではない。今の医学では子どものころにB型肝炎ウイルスに感染すると一生、体の外に排除できず、一生、その苦しみが続く。感染した人は、いつ慢性肝炎になるのか、肝硬変、肝がんを発症するんじゃないかという不安や苦しみを抱えて生活をしていかなくてはならないと説明した。

3人の患者の体験では、25年前の40歳代のときに、肝機能の異常を示す数値が上がり、入院、治療を始めた。副作用もある高価な薬を使ったが効果が得られず、治療、退院はしたが、毎日、近くの医者に通院し、注射など治療を続けた。「私には働いて家族を養わなくてはいけない責任と義務がある。生活のために働く自分と病気と闘う自分と、本当に体が2つあったらいいなと思った」。

治療以外にも家を建てるとき生命保険に加入できず、悔しい思いをした。いまだに世間ではB型肝炎というだけで、感染する、怖い、いやらしい病気だと決めつけている傾向があり、多くの患者は感染を知られたくない。しかし会社の健康診断では、次の人が待っているところで「B型肝炎ですね」と大きな声で言われたりしていたたまれない気持ちになる。その人たちにすれば差別ではなく区別、しかし、患者にとってはとてもつらい。

医療従事者でもそうで、「今も皆さんの周りには病気で苦しんでいる人が大勢いる。ふだん何気なく話していることで傷つく人がいるかもしれない。思いやりをもって人と接することが大事」と話した。

「小学校のころに集団予防接種を受けた。最初の注射は痛いんだってと3番目に並びました」と始めた人は、自身が感染を知ったのは2回目の出産だった。献血では検査で何も言われたことがなかった。最初の子どもを妊娠したとき、血液が変だねと医師に言われたがそれに対しての説明もなく気にも留めていなかった。

3年後、2番目の子どもを出産。母親たちは時間になると授乳室に行き、我が子がくるのを心待ちにしていが、「あなたはB型肝炎だがら、ほかの人に移ると悪いので、念のため別室でお願いします」と言われた。「なんのこと?、B型肝炎?、うつる?」。生まれたばかりの子どもと授乳のつど隔離された。自分と子どもが使ったガーゼや産着はそのつど廃棄された。

「血液が変」の正体がわかると同時に、自分が献血した血液で、ほかの人が死んだりしていたらと怖くなったが、出産のときのように特別扱いをされるのでは、家族にも迷惑がかかるのではと言えなかった。友人に話したら連絡が来なくなる人もいた。口を閉ざし、耳を閉ざし、心の目を閉ざした。恐怖心と罪悪感でいっぱいだった。

結局、子どもには感染しなかった。詳しい検査の結果、自分の血液はほかの人に感染せず、自分の体にだけダメージを与えるとわかった。「B型肝炎は、手でふれたり、空気感染では移らない。もし自分だったら、もし家族だったらと相手の気持ちに寄り添い、差別や偏見をもたず自分の考えをしっかりともって判断してほしい」。

3人目の体験を話した人は、27年前に人間ドックで感染を知らされたと言う。そのころは、病気の内容もわからず、感染の原因もわからず、それでいて人に移る病気と、とても家族には言い出せず、ひとりで悩み、苦しんだ。ようやく決心をして妻に話し、子どもたちの万一の時に輸血をしてやれないんだねと言われた。

母親は、相談した医師から「きっとお母さんから感染したんじゃないか」と言われ、責任を感じて謝っていた。おととし、国は、わたしのB型肝炎は子どものころの予防注射が原因だと認定し、母子感染ではないとわかったが、その時には子どもを感染させたと心を痛めていた母親はすでに亡くなっていた。

感染していると告知を受けてから、人生の半分近くの年数が発症におびえる生活。国によって健康を害された。過去の病気ではなくて、現在も拡大していると言い、「人権について考えてほしい」と生徒たちに投げかけた。

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