19、20日と三条市で日本鍛冶学会第5回大会が開かれており、初日19日は三条のものづくりのプロセスをその現場を見て確かめるエクスカーションや基調講演が行われた。
三条市の産業の礎を築いた「鍛冶」を単なる伝統として守るだけでなく、産業としてより発展させようと、福井県越前市、兵庫県三木市、富山県高岡市などの他産地や道具の使い手と産業振興の課題について学び合おうと毎年、三条を会場に開かれている。
エクスカーションはことしの目玉で、約40人が参加した。テーマは「鍛冶屋さんへ行こう!」。鋼材を販売する株式会社野崎忠五郎商店からその材料を使ってくわなどの農具を製造する株式会社相田合同工場、農具の柄などを製造する木工の株式会社おやなぎ、完成した製品を流通させる卸商の株式会社ナガオカ・リコー、そして物産館で製品を小売りする燕三条地場産センターの順に見学。ものづくりの流れを追うことで、ものづくりにかかわらない人にもわかりやすかった。
株式会社野崎忠五郎商店では、鉄鋼メーカーから仕入れる棒鋼や鋼板を鉄を客の注文に応じたサイズに加工して納品する。巨大なトイレットペーパーのように巻かれた鋼板は重さ10トンにもなる。直径10センチも超すような太い棒鋼を切断する機械は大きさも音も巨大。迫力に圧倒されて目を丸くし、あんぐりと口を開けて見入る人もいた。
昨年7月に稼働を始めた新工場は、床がコンクリートではなく砂利が敷いてあるだけ。思い鋼板を置いていると何センチも床が沈んでしまうが、砂利なら砂利を足すことで高さを戻すことができるといった、作業上のさまざまな工夫にしきりにメモを取る人もいた。
基調講演は三条小学校体育館で行い、株式会社イトーヨーカ堂QC室衣料・住居担当総括マネージャー北原一氏が「鍛冶業界の永続的発展とは」をテーマに1時半行い、約70人が参加した。
北原氏はグループ会社のセブン-イレブンジャパンのセブンカフェは年間7億杯を販売しているが、10分野24社の多様なものづくりの専門家を結集したチームマーチャンダイジングから生まれており、「協働して分業制を確立するのがこれからのいきかた」、PDCAサイクルに関連して「きちっと情報を伝達するのが重要でネットを活用するとまだまだチャンスはある」などと地場産業の生き残りの方策に生かせるアイデアなどを話した。
20日は午前9時半からステージえんがわと三条鍛冶道場でワークショップ「親子体験教室」、11時から三条鍛冶道場で「作り手と使い手のつながりを考えた結果は」をテーマにトークセッションを行い、ゲストパネリストに製品安全コンサルタントの高杉和徳氏、パネリストに越前打刃物産地協同組合連合会、三木工業協同組合、三条金物卸商協同組合理事長の長岡信治氏を迎え、日本鍛冶学会実行委員長の相田聡氏がコーディネーターを務める。