八十里越フォーラムを八十里越を踏破した梨本次郎さんがリポート (2016.11.21)

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20日、燕三条地場産業振興センターで開かれた「八十里越フォーラム」を参加した三条市の登山愛好者、梨本次郎さんがリポートしました。実際に八十里越を踏破した梨本さんならではの当事者性の高い思いに引き込まれます。

NPO法人しただの里主催で「八十里越フォーラム」がありました。先月、八十里越を歩いたばかりですので、興味があって聴講してきました。

20日開かれた八十里越フォーラム
20日開かれた八十里越フォーラム

第1部は主催者の大竹晴義理事長による八十里越古道・新道調査結果発表。話を聞いて初めて知ったのですが、私が歩いたのは「明治新道」であり、河井継之助が通ったのは「天保古道」だったということです。かつて、継之助が敗走したのはこの道か、と感慨深く思っていましたが、まるで見当違いでした。

現在、歩いている八十里の道(明治新道)は吉ヶ平を出て椿尾根に向かいますが、天保古道は椿尾根手前から高度を上げ(150〜200mほど上に道があります)椿尾根を越え、番屋山から延びる尾根をつたい関屋ツンネへそしてブナ坂へ向かう道です。

現在、椿尾根から直登して天保古道経由番屋山へと向かうルートを占有許可申請中。吉ヶ平から雨生ヶ池そして番屋山に登り、尾根をつたい里眺めへ、そして天保古道で椿尾根に下る、番屋山を周回して吉ヶ平に戻るというお手軽で八十里越の古道も歩ける夢のルートが完成します。古道トレッキングコースの完成が待ち遠しいところです。

ちなみに「天保古道」のどこかの松の木の根には長岡藩の埋蔵金が眠っているそうで、一説には3千両、今の価値で3億円とも言われ、昔からトレジャーハンターが多く八十里越に入っているという話も聞きましたが、これも初めて知りました。

第2部では「越後と会津・八十里とは」をテーマに、NPO法人日本トレッキング協会会長で元NHKのエグゼクティブアナウンサーの国井雅比古氏と、長岡市の河井継之助記念館館長の稲川氏、只見町からは教育委員会教育長を長年務められた飯塚氏の3人の豪華な顔ぶれがパネリストとなりディスカッションが行われました。

先ほどの埋蔵金の話から、史実的な検証など、話は多岐に渡り、どれも興味深いものでしたが、中でも長岡藩から見た河井継之助のネガティヴなイメージには唸るものがありました。

当時、戦火に包まれた長岡城城下町では、河井継之助による御触れが出され「3歳以下の子どもは捨ててはならぬ」とされました。戦ごとで敗走するにあたり、子どもは足手まといになるので、戦下の不文律として「捨てる」というのが横行していた時代です。

しかし、継之助は長岡の未来のために「捨てるな」としました。とはいえ八十里越はとても赤子を背負って越えられる峠ではなく、途中でやむなく(どこの峠かは言いませんでしたが)、乳飲み子を投げ捨てるということが多発したそうです。

この行き場のない悲しみは「八十里越に行かざるを得なかったのは河井継之助のせいだ。なぜ、八十里越なんかに行かせたのか」となり、また、新政府軍の肩入れをしたものは厳しく処罰するとして、長岡藩への背任行為をした三条の人を(それも妊婦だったとか)を何人も処刑したという話もあって、越後人にとっては(特に長岡と三条は)赤子が捨てられた八十里越も、妊婦を処刑した河井継之助も良いイメージは何一つないという話でした。ネガティヴなイメージだということは知っていましたが、この話を目の当たりにすると歴史のうねりと戦争の悲しみに声が出ませんでした。

主催者の大竹晴義理事長の天保古道発掘に対する情熱は凄まじいものがあり、北アルプスの稜線から日本海までつづく栂海新道を切り拓いた小野健さんに通ずるもものがありました。こちらは古道の発掘で、小野健さんは新道の開拓ということで、まるで正反対ではありますが、「道」に魅せられた男ということでは一緒だと思います。

古道という歴史もロマンがありますが、「道」を切り拓いたり、探したりする行為にもロマンを感じます。また、それにかける情熱には心打たれるものがあります。人生が「道」そのものだからなのでしょうか。今日はとても良いフォーラムに参加できて心が満たされました。

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