20日に東京都・アーバンプラザ小岩で行われた「ローランドピアノミュージックフェスティバル2016 関東信越本選」で三条市立月岡小学校6年高橋京太郎君(12)は小学生部門Bで初めての最優秀賞に輝き、全国大会に出場できるファイナリストともなった。
ポピュラー曲を中心とした多彩な課題曲から1曲を選んで、ミュージックデータとのアンサンブル演奏かピアノソロ演奏で参加するコンクール形式のフェスティバル。日本の大手電子楽器メーカー「ローランド」の主催で毎年行われている。
小学生、中学生のそれぞれAとB、一般の計5部門あり、小学生は74人が参加。高橋君は小学校4年生から6年生の小学生部門Bで課題曲のなかからコンテンポラリージャズ『教養の闘い』を演奏した。
各部門1人ずつ最優秀賞と優秀が決まったが、そのうち高橋君と一般部門の最優秀賞の2人だけがファイナル出場者に選ばれ、来年3月11日に東京都・第一生命ホールで開かれる全国大会に出場。今回の曲とは違って本番の1カ月前に発表される課題曲から1曲を選び、今度はオーケストラと一緒に演奏する。
月岡小学校(石井正文校長・児童378人)は24日、臨時の全校朝会を開き、全国きっぷを手にした高橋君の演奏を全校児童に聴いてもらった。スピーカーからのミュージックデータの音が小さくて高橋君にはよく聞こえず、厳しい環境のなかでも高橋君は見事に演奏をやりきった。児童はめったに耳にすることのないジャズピアノにあっけにとられて聴き入り、大きな拍手を送っていた。
高橋君は公務員高橋稔郎さん(44)と奈津恵さん(45) の間に生まれた3人の姉をもつ4人きょうだいの末っ子。小学校へ上がる前に幼稚園で担任がピアノを弾いているのを見て「ぼくも弾きたい」と自分から進んで三条市内のピアノ教室に通い始めた。
そこで講師の新潟市中央区、長井聡子さんと運命的な出会いがあった。ふたりは最初から相思相愛。高橋君は実の親のように長井さんのことが大好きで、長井さんは「(高橋君を)どんなに怒ってしかっても、運動会のリレーを見に来てくださいって言って」と笑う。長井さんにとってもわが子のようにかわいい存在だ。ことし4月から長井さんは新潟市中央区のピアノ教室に移っても週1回、通っている。
このフェスティバルには4年生から毎年、参加して昨年は初めて敢闘賞を受けた。長井さんは「最優秀賞には中学でもまだ腕が足りないかと思っていたので、小学生で取れたのはうれしい誤算」と言う。
「演奏は緊張しなかったけど、間違いが多くてだめかなと思った」と高橋君。最優秀賞と発表されたときは「もうやばい、気絶しそうになった」と大興奮。「先生のつくったアレンジのところはミスが少なくて良かった」と冷静に振り返る。
長井さんも「秘策があった」と明かす。「もしかしたらいけるんじゃないかと勝負に出た」。課題曲のなかで一部にアレンジを加えることが許されている。「どきっとするようなアレンジに変えて、それを見事にやってくれた」と高橋君をほめる。
高橋君も「先生の言う通り力不足なのでは」と言う。関東信越本選から全国大会に進んだ人は、全国大会でもたいてい何らかの賞を取っているので、プレッシャーもある。それでも「みんなを驚かせるような演奏をしたい。去年の全国大会の小学生の最優秀賞が5年生で、ことしは6年生で出てくるから、その人に勝てる演奏をしたい」と勝ち気な一面も見せる。
石井校長は「個性を伸ばすということは、学校の子どもたちにもいい例になるし、ほかの子どもたちにもそうあってほしい」と高橋君の全国大会での活躍にも期待している。