【小耳聞き耳】断水で生かされなかった緊急連絡管 (2016.12.6)

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11月22日、福島県沖を震源とした地震で停電が発生した燕市で、大規模な断水が発生した。2時間近くに及んだ断水は市民生活に大きな影響を与えたが、断水の時間はもっと短縮できた可能性があった。停電発生当日の取材でうっかり突っ込んで取材するのを忘れていたが、今さらながら取材してみた。

燕三条地場産業振興センター付近に設置された燕市と三条市の水道をつなぐ緊急連絡管
燕三条地場産業振興センター付近に設置された燕市と三条市の水道をつなぐ緊急連絡管

燕市と三条市の水道管はつながっていて、仕切弁を開くことでいつでも水道水を融通できる仕組みになっていることは知っていた。さらに今回、給水ができなくなった旧燕市の道金浄水場は、市内の旧吉田町の吉田浄水場、旧分水町の分水浄水場ともつながっていることを先の取材で確認した。

異なる浄水場が配水する水道をつなぐ緊急連絡管がある。緊急連絡管は、災害などで断水が発生したときに相互に水道水を供給するために設置している。大規模な災害ではなかったとはいえ、今回のような断水でこそ活用しなければ、宝の持ち腐れでしかないが、そのバルブを開いたという話は聞かない。そう考えてあらためて取材した。

燕市内には合併前の3市町の浄水場が存在し、それぞれ合併前と同様に独立して3市町に水道水を配水している。同時に3つの浄水場は緊急連絡管で結ばれており、旧燕と旧吉田が1カ所、旧燕と旧分水が1カ所、旧吉田と旧分水が2カ所の緊急連絡管を設置している。

燕市と三条市の水道緊急連絡管の接続イメージ
燕市と三条市の水道緊急連絡管の接続イメージ

燕市と三条市は、3カ所も緊急時連絡管で結ばれている。燕市内を含めていずれも緊急時連絡管は直径100ミリの本管だ。2011年の7.29水害で、三条地域水道用水供給企業団の取水源は、濁りがひどくなって水道水を供給できなくなった。加えて本管にも破損のおそれがあって三条市内では断水が完全に解消するまで数日間も要した。

このときに一定の役割を果たしたのが、燕市の水道。両市の消火栓をつなぐことで、供給能力が圧倒的に不足していたとはいえ、燕市の水道水を三条市に供給でき、三条市内の一部地域に水道水を配水できた。この教訓から両市は翌12年3月9日に水道緊急連絡管水融通等相互応援に関する協定を締結。12年度に2カ所、14年度に1カ所の緊急連絡管を設置した。

今回の断水は、午前5時59分に地震が発生し、東北電力によると午前6時2分から7時25分まで停電したことが引き金になった。停電と同時に自動的に自家発電機は作動したものの、電気系統のトラブルで配水ポンプに給電できず、断水。停電が復旧してから通常の電源に切り替える作業にも手間取り、結局、配水ポンプが運転を再開したのは7時49分。2時間近くも断水が続いた。

配水ポンプが運転できないなら、次善の策は緊急連絡管のバルブを開くことだが、その手段をとることはなく、結果的に宝の持ち腐れとなった。バルブを開く作業はそれ以外の対応を妨げるものではなく、あとになってみれば電気設備の修復や市民からの苦情の電話対応と並行してバルブを開く作業を進めていれば良かった。

水道局では、水圧や濁り水の問題やこれまで瞬間的な停電はあったがまさか1時間半近くも停電が続くとは予想しなかった。現場での復旧作業、市民からの苦情電話の対応などに追われ、緊急連絡管をバルブを開くタイミングを逸したと説明するが、そもそも緊急連絡管の操作が頭になかったではという声もある。

市内だけでなく、三条市と結ばれた3カ所の緊急連絡管も頼もしい限りだが、そもそも三条市との協定が結ばれたのは、三条市の断水がきっかけだっただけに、燕市は応援する側で、応援してもらう側になるという発想も希薄だったのかもしれない。

緊急連絡管の設置場所
緊急連絡管の設置場所

水道局では、災害時における断水の対応のマニュアルは作成していたものの、長時間の停電を想定したマニュアルを作成していなかった。また、震度4以上の地震が発生した場合は職員は自動招集となっているが、今回、燕市は震度3だったことも対応の遅れにつながったようだ。

今回の断水は、電気設備の老朽化、配水ポンプの更新に伴う電気設備の増設や改造が原因なったようで、2日に自家発電機への切り替えの模擬試験を行い、さらに7日には夜間作業でより確実な機能診断を行う計画だ。

燕市は、市内各浄水場の老朽化に伴って浄水場を統合し、新しい浄水場を建設する計画を進めている。最も危惧していたのが、統合した場合は万が一、新しい浄水場が機能しなくなった場合、市内全域で断水してしまうこと。現状なら浄水場間で水道水を融通し合えるわけで、古くて配水能力が低いながらも多少なりともリスクヘッジになっている。

大規模災害時の停電への対応も考えなければならないのかもしれない。05年から稼働している新潟市の最も新しい浄水場、信濃川浄水場は高架配水搭を設置した。燕市に残る水道の塔のように、近年は採用されなくなっていた位置エネルギーを利用して配水する自然流下方式を採用。そのメリットのひとつに災害や事故での停電時にも安定した給水が可能な点にあり、燕市の新しい浄水場の建設にも検討の余地がある。

田上町などに設置された環状交差点も、信号機を設置しないので停電しても機能するというメリットがある。これからのまちづくりは常に災害対応を前提に考えていかなければならない。


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