燕市の研磨業者が中心の共同受注グループ「磨き屋シンジケート」(平浩明チェアマン)は、会員企業の後継者育成や事業活性化を目的に研磨材製品を開発・販売するスリーエム ジャパン株式会社(デニース・ラザフォード代表取締役社長、本社東京都品川区)と協働して11日から13日までの3日間、スリーエム ジャパンの研磨体験カーを活用した第2回次世代研磨研修会を開いている。
磨き屋シンジケートはシリーズで次世代研磨研究会を開いており、スリーエム ジャパンとの取り組みは10月13日の第1回に続いて今回が2回目。第1回の参加者から自社での実際の作業で試したい、ほかの研磨材を幅広く紹介してほしい、若手にさわってもらいたいといった声があったことから、研磨体験カーで各社へ出向いて現場で作業性が向上するデモを行い、現場で実際に行っている素材、作業で3Mの製品を試してもらうことにした。
研磨体験カーは昨年10月3日に導入した。バンに同社の製品約300種を格納。デモ台やグラインダーといった研磨に必要な機器類も搭載し、製品の違いや性能をわかりやすく体験して製造現場の生産性向上につながる提案ができる。
これまで展示会で披露したことはあるが、本来の目的である研磨の現場の訪問は今回が初めて。3日間で希望した燕市内の研磨業者7社を順に訪問している。
初日11日は燕商工会議所で出陣式を行い、磨き屋シンジケート事務局の燕商工会議所・高野雅哉総務課長、磨き屋シンジケート・平チェアマン、スリーエム ジャパン研磨材製品事業部マーケティング部・武井厚部長があいさつし、研磨体験カーの前で記念撮影してから出発した。
最初に訪問したのは研磨・溶接を手掛ける有限会社RK(小林久芳代表取締役・本社燕市小池)。RKではステンレスを溶接した部分の仕上げ作業の効率化に取り組んだ。
盛り上がった肉盛りを削る砥石、表面をきれいにするために磨くペーパーフラップ、最後にヘアライン仕上げ用の3種類の研磨材を使っているが、スリーエム ジャパンは肉盛りを削り、磨くという2つの作業を不織布研磨材「スコッチ・ブライト研磨材」ひとつで置き換えられないかと提案。研磨体験カーのデモ台で作業を試してもらってから、実際の製品でも試してもらった。
結果はねらい通りにうまくいった。「スコッチ・ブライト研磨材」は、表面をきれいにするための研磨材として使われるのが一般的なだけに、現場で試した社員は「スコッチで削るという考えがなかった。イメージ的には仕上げに使うものだった」と、まさに目からうろこだった。
「スコッチ・ブライト研磨材」だけを使うことで、作業時間を短縮でき、コストも削減できると見られ、「これなら社長も考えてくれる」と太鼓判を押しながらも、ヘアライン仕上げを含めてひとつの研磨材でできないかと、スリーエム ジャパンの担当者に逆提案。研磨体験カーは現場でのニーズを吸い上げることにも貢献しそうだ。
RKの小林社長は、研磨の委託を受けた製品をだめにすることはできないので、現場ではすでにノウハウの蓄積のある研磨材を使うため、「新しい研磨材を使うことはまずない」と言う。一方で、「職人は道具で壁にぶちあたる。そのときに新しい道具を使って改善できれば」と新製品にも期待していた。