「燕ブランドのみそで地域貢献がしたい」と夢見た越後味噌醸造株式会社(燕市吉田仲町)の代表取締役木龍康一さん(32)と、「昔ながらの自家製のみそづくりを受け継いでほしい」と願うひうら農場(燕市吉田本町)の農業樋浦幸彦さん(39)の出会いから始まったプロジェクトが始動。燕市産のコメとダイズを使ったみそを仕込んだ。熟成を待って6月ころに初めての燕だけの原料から醸造したみそが生まれる。
16日から19日までの4日間、越後味噌醸造で樋浦さんも手伝って木龍さんと二人三脚で仕込んだ。まずは米麹(こめこうじ)づくり。樋浦さんが栽培したコメ、コシヒカリを蒸して麹菌(こうじきん)を振りかけ、麹室(こうじむろ)に入れて麹菌を増やした。
そして蒸して細かくつぶしたダイズに麹菌と塩をまぜて仕込み完了。越後味噌醸造は、これまで北海道産や外国産のダイズを使っている。ダイズは燕市ではほとんど生産されておらず、JAや中間問屋に頼んで燕市産だけを納品してもらった。約200キロのみそを仕込み、あとは温度管理した温醸庫に寝かせて熟成を待つだけだ。
ダイズに対する麹の割合を麹歩合と言い、一般にはダイズに対して6割から8割の麹と合わせることが多いが、麹歩合を高めの10割で仕込んだ。麹の甘みやうまみがしっかり感じられるみそになると言う。
プロジェクトの始まりは1年前の昨年2月。樋浦さんが栽培するコメを使ってみそが作れないかと木龍さんにもちかけ、2016年秋の新米の収穫を待ってのみそ仕込みとなった。
ただ待っていただけではない。昨年5月から月1回、樋浦さんは越後味噌醸造の店舗で生産した野菜を直売している。昨年秋の工場の祭典では、木龍さんと樋浦さんをはじめ燕市吉田地区の異業種の6人で「KOUBAツアー&レセプションパーティー2016」を開催した。それは燕市産にこだわったみその仕込みに向けて盛り上げて行こうという伏線でもあった。
かぎとなるみそのネーミングやパッケージはこれから検討する。木龍さんは「燕市やふるさと納税のお礼品、企業の人からもプレゼントなどに使ってもらえるようなものにしていきたい」、「将来的には木桶(きおけ)で4.5トン、がっつり仕込めるようにしたい。醸造を重ねればどんどん、おいしくなる」と言う。
この取り組みはまだほんの始まりに過ぎない。「地元の作り手がつながって新しいものを生み出す。それがいちばんやりたかったこと。これをきっかけに燕市の食を盛り上げたいし、周りがどういう反応をするか楽しみ」とわくわくが止まらない。
樋浦さんは家では母が自家製みそを仕込んでおり、その味は絶品と評判だ。「昔の農家はみんな自分の家でみそを作っていた。このままではなくなってしまう。こういう形でもみそ作りが引き継いでいければと思う」と言い、この取り組みを専売特許にするつもりはない。「一緒に取り組む農家の人が増えればいいし、これ以外のコラボレーションもできたら」と同志が現れることも期待する。
樋浦さんは地元、燕市吉田本町の農家と「もとまちキュウリ」のブランド化に取り組んでいる。越後味噌醸造では、5、6月ころに、もとまちキュウリを使って初めてキュウリのみそ漬けを仕込む。ゴールデンウイーク前には米麹を使った甘酒の発売も予定しており、ことしの取り組みは注目だ。