「しかけ絵本蔵書日本一」を誇る三条市主催の初めての「手づくりしかけ絵本コンクール」で、一般の部の最優秀賞に選ばれて賞金100万円を獲得した作品は『ちいさなめ』。東京都小平市に住む延近里美さん(56)が文、その長女の萌さん(27)が絵を担当した母と娘の合作で、「一卵性親子だっていうくらい仲良し」と言うふたりで絵本作家デビューを目指している。
21日に三条市保健センターで行われた表彰式にふたりそろって出席した。『ちいさなめ』は、女の子が庭に埋めた給食の種が育ち、ビワの実がなったという話を6ページのしかけ絵本にした。ページを開くと家や庭の草花、木々、女の子などが飛び出す。リンゴ、メロン、ブドウなど果物の絵をめくると、なかにそれぞれの本物の種が入っているユニークなアイデアもある。
ストーリーは実話で、主人公の女の子は萌さん。ビワの木の芽が出たのを見つけたのは萌さんのおじいさんで、当時の萌さんは7歳。それから10年たった17歳のときに大きく育ったビワの木がたくさんの実をつけた。当時、そのできごとを基に絵本を制作。それから10年の間に4回ほどリニューアルした今回の作品で最優秀賞に輝いた。
里美さんは、都内の絵本講座を受講している。萌さんは美術大学を卒業し、今回のように文と絵を分担してふたりでたくさんの絵本を作った。今回は講座で三条市の絵本コンクールのポスターを見て昔、作ったものがあると思い出し、あらためて作り直して応募した。
里美さんは「本当にわたしは絵本作家になりたかった。それで30年たった。娘がたまたま絵が上手で、これはいけるかもと思った」。萌さんも絵本作家を目指して絵を描いており、ふたりの合作で絵本作家デビューを目指している。
「本当に双子に生まれたかったねっていうくらい仲良し」で里美さん。「死ぬまでには絵本を出版すること」が夢。賞金100万円は「奨学金を返します」とふたりで笑った。
小・中学生部門で最優秀賞 に輝いた『ふしぎな小麦粉』の作者、兵庫県西宮市の小学校4年生椎木寧音さん(10)も表彰式に訪れた。夏休みに地域で絵本の制作を教えてくれるサークルがあり、毎年1冊、絵本を作っている。
「賞をもらうとは思わなかった。すごくうれしいし、びっっくりした」と椎木さん。「また絵本を書きたいと思うけど、ストーリーはまだこれから」と話していた。
コンクールには全国から一般部門91点、小・中学生部門13点の計104点の応募があった。表彰式では審査員を務めた絵本作家、きむらゆういちさんによる作品解説も行われた。また、21日から29日まで栄保健センターで作品展を開き、応募全作品を展示している。