後継者不足で廃業の危機に追い込まれる燕市のナイフ製造技術の継承をと、日本金属洋食器工業組合は24日から3月30日まで第1期ナイフ技能研修をスタートした。
研修を受けるのは、市内洋食器製造メーカーなどの若手職人14人。燕市磨き屋一番館を会場に火曜班と木曜班に7人ずつに分かれ、火曜と木曜の週2回、いずれも午前9時から正午まで燕市磨き屋一番館で研修するもの。初日24日は勤め先の都合もあって木曜班の1人も加わって8人、会場の一番館の研修生も一緒に研修を受けた。
第1期で研修するのは、持ち手の中を空洞にした「モナカナイフ」の研磨技術。初日は座学だけで、講師は中学校卒業の15歳から燕市水道町、高山研磨の2代目として働く研磨業高山泰雄さん(72)が務める。高山さんはさっそくモナカナイフの研磨に向いたバフを配った。
バフは円形の布でできており、研磨剤を着けて高速回転させたバフに研磨したい材料を押し当てて研磨する。高山さんが用意したバフは、一般的な金属洋食器の研磨に使われるもののより5割ほど幅広く、素材も柔らかい。これにより材料に幅広くバフが当たり、一般のバフでは何回かに分けて磨くところを1回で磨くことができるという。
バフは使用前に慣らしが必要だが、慣らしのやり方から参加者は高山さんからのアドバイスを求め、これだけでも十分に勉強になっていた。
高山さんによると、スプーンやフォークに比べてナイフの研磨は工程数が多い。加えてモナカナイフとなると一般の硬いバフでは研磨し過ぎて材料に穴を開けてしまう恐れがあり、研磨業者はいやがると言う。
研磨業者は高齢で廃業する人が相次いでいる。加工業者を束ねる“まとめ屋”に今回のような研修は「10年、15年も遅い」と言われたと、高山さんは技術や職人が失われつつある現状を残念に思っている。
参加している市内で研磨業について2年目の男性は、技術の向上につながればと参加した。半年前からナイフの研磨を始めたが、日々の仕事に追われてじっくりと技術を学んだり腕を磨いたりする時間はない。同僚でも研磨技術のレベルはまちまちで、高山さんの話に目を輝かせて聞き入ってた。
洋食器のなかでもナイフの製造工程は分業化されており、複雑で専門化している。職人の多くが後継者不足や設備の老朽化で廃業の危機に追い込まれており、第1期以降もそのほかのナイフ製造技術の研修を行う予定だ。