三条市下田地区で活動する地域おこし協力隊は、地元農家に栽培してもらったサツマイモで芋焼酎(いもしょうちゅう)を作り、お返しにできた芋焼酎をプレゼントする「芋主プロジェクト」に取り組み、東京五輪もにらんでその名も「五輪峠」と命名した本格芋焼酎が完成した。
芋焼酎の本場、九州で一般的な焼酎用のサツマイモの品種「黄金千貫(こがねせんがん)」を栽培してくれる農家を昨年春、下田地区で募集した。24人が名乗りを上げて栽培し、約2,149kgを収穫。醸造に必要な麹(こうじ)も地元でと5人から原料となるくず米も提供してもらった。
醸造は新発田市・金升酒造株式会社に委託し、昨年12月9日から仕込み、このほど完成。原酒はアルコール度数40度で、製品は調整して25度にし、四合瓶(720ml入り)で1,300本、計930リットルの芋焼酎に仕上がった。芋を提供してくれた芋主には、提供した芋15kgにつき芋焼酎1本を返し、残りを販売する。
下田地区の飯田小学校裏手にある「五輪峠」と命名し、売り上げの一部は東京パラリンピックに寄付する計画。試作中のラベルの表は飾る「五輪峠」の書は、三条市・パール金属株式会社の高波久雄会長が揮毫(きごう)した。販売価格や取扱店は検討中で4月中には一般販売開始の予定だ。
19日夜、下田地区の旧荒沢小学校で芋主や地域おこし協力隊ら25人ほどが参加して試飲会と報告会を開いた。芋主のひとり、曲谷自治会長の五十嵐裕和さん(63)は、以前からサツマイモを栽培しており、昨年はそれに加えて焼酎用の黄金千貫の苗200本を植えた。
「見た目がわーりし、小せのばっかで、肥料が足りんかったんか…」とこぼしながらも、約460kgを収穫。晩酌はビールばかりで、焼酎を味わったのはほぼ初めてだったが「イモ臭くねーし、酔っ払えばいーんだて」と笑い、すぐに顔を赤くしていた。
プロジェクトの主担当は、地域おこし協力隊となって1年半、NPOソーシャルファームさんじょうで活動する長岡市出身の大滝雄斗さん(27)。「すっきりして非常に飲みやすい焼酎になりました。芋焼酎の臭みが苦手という人もおいしく飲めると思う」と出来栄えに大満足だ。
今回は初めての栽培だったので試験的な意味合いが強かったが、ことしはさらに本格的に栽培に取り組む。「下田の名産品に育てて農家の人の収入にもつながれば最高」と大滝さんは願っている。