2014年に始まった三条市若手芸術家支援事業。4年目のことしは書家の檜川銕研(本名・仁志)さん(42)=三条市条南町=の書展を11日(土)から15日(水)まで三条東公民館で開く。
この事業は「三条市文化芸術に関する懇談会」が提案し、全国公募展などで活躍する市内の若手芸術家の作品展開催などを支援する。檜川さんは2つの多目的ホールを使って合わせて45点の書を展示する。
檜川さんは三条市二之町(今の本町4)に生まれ、小学校に入ってまもなく1、2年ほど書道教室に通ったのが書との出会い。「そろばんと習字くらいしかなかった」(檜川さん)と、よくくある子どもの習いごとだった。
本格的に筆をとったのは、県立三条工業高校(今の新潟県央工業高校)に進学して書道部に入ってから。新採用教諭だった顧問の血指導を受けて、ぐんぐん腕を上げた。
文化系の高校生のインターハイといえる全国高等学校総合文化祭に書道部門の新潟県代表として参加したり、県内の教書大会で特別を受けたりと、評価された。「賞を取ったりしたから、なおさらやめにくくなった。やっぱり賞は励みになる」と、ますます書にのめり込んだ。
高校を卒業すると金型職人になり、30歳代前半で介護士に転職し、昨年9月に勤め先が廃業したこともあり、無職に。時間がたっぷりできたので今回の書展に向けた作品制作に打ち込み、落ち着いたら再就職するつもりだ。
社会人になると師を探し、新潟県美術家連盟会員で三条書道連盟常任理事兼三条市文化団体協議会理事、三条蘭亭会会員の新潟市南区の薄田逸齋氏に師事した。
三条市美術展では98年に市展賞を受け、99年には初めて全国公募展に挑戦した中央の独立書展で佳作に。翌00年には最高賞の独立賞1人に次ぐ、4人だけの特選に輝いた。
三条市展では受賞を重ねて委嘱出品になり、合併で新たにスタートした三条市展でも再び委嘱出品になった。県内中心の書道団体、太空会の同人で三条市美術協会理事でもある。
檜川さんの作風は、形式にとらわれないいわゆる現代書。淡墨も使ってにじみも巧みに表現に利用。昔の手本に習った臨書やかな文字、さらに洋画家中川一政の言葉、作詞家星野哲郎の詩、3月末で閉校する母校三条小学校の校歌を書いた作品もある。
「尻に火が着かないとできないタイプで、火が着いたのは寒くなってから」と檜川さん。ちょうど失職して時間ができたこともあり、大半の作品をこの冬に集中して制作した。
線がつながった行草鯛ではなく、楷書(かいしょ)や隷書(れいしょ)が中心。「割りとじっとしている字で、読みやすく親しみやすい字」と自身の作風を表現する。「共感したような言葉を書いているので、字の形にとらわれるのではなく、言葉の意味や自分の感じた気持ち書で表現しようと心がけている」。また、「字がやわらかいから、癒やし系と言われることもある」とも。
個展は初めてで「こういう機会でもないとなかなか個展はできない」と、檜川さんは三条市の事業に感謝。9、10日と会場で展示作業にあたっており、たくさん並んだ自身の作品に「こっぱずかしい」と笑う。
初日11日は午前10時から開場式を行い、10時半から檜川さんの開設で作品鑑賞会を開く。さらに11日午後2時から臨書、12日午前10時半から創作の作品を会場で制作する席上揮毫(せきじょうきごう)を披露する。入場や見学は無料。