燕市井土巻、洋食器センターキタローは、26日の閉店を前に17日で団体客の受け入れを終わり、18日から26日まで全品半額セールを行う。
17日の団体客は、東京都の旅行代理店から2件と埼玉県、富山県、宮城県の旅行代理店から1件ずつの5件を受け入れた。富山県の旅行代理店の団体客は沖縄県から訪れた。観光バスが到着するたびに観光客がどっと店内に入り、閉店が間近いとは想像できないにぎわいだった。
洋食器製造見学工場も団体向けのスプーン製造実演はこの日が最後。厚さ2ミリのステンレス板から原形を抜く「地抜き」から板を伸ばす「ロール」、柄に模様をつける「柄押し」、スプーンの形に切り抜く「半切り」、皿のくぼみをつける「つぼ押し」までの5つの工程を5分ほどで実演する。これに「みがき」、「絵塗り」を施すことで店内で販売しているのと同じスプーンが完成する。
実演の担当は、それ以前は洋食器工場で働いていて退職した2人で、古株は燕市熊森、春木ユリさん(75)。65歳まで市内の洋食器工場で働き、キタローの実演を始めて10年になった。実演しながら作業工程の解説も行う。
17日は「プレスしてみせるわけ?」、「まじですか!」と朝から上機嫌の見物客も、200トンのフレキションプレスの音の大きさに首をすくめてびっくり。笑いもまじえた春木さんの名調子の解説に実演が終わると拍手が起こり、製造工程を目の当たりにして感心していた。
「しゃべってお客さんと接して、ほめていただくとうれしいですよ」と春木さん。最初は怖くてできなかったロール作業もすぐにこなせるようになった。「定年になってここで使ってもらって助かりました。男の人の仕事ができるし、やる気もでました。思えば幸せでしたよね」とにっこり。
農業も営むので、ふたりでの交代勤務はちょうどいい仕事のペースだったが、閉店後は農業だけになり、「ちょっと寂しい気もします」と春木さんは話した。