藤井大輔&芳輔の鉄道コラム「鐵道双見」
上越新幹線のE7系電車の運行開始で姿を消すE4系電車Maxの全2階建新幹線 (2012.4.8)

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すっかりご無沙汰しておりました。何年ぶりかの「鐵道双見」となりました。


JR東日本が4日、上越新幹線に来年度以降、新車「E7系電車」での運行開始を正式に発表した。すでに先月25日に新聞報道されていたので、この正式発表自体に新鮮味や驚きはない。上越新幹線にとって「新車」であるが、「新型車輛」ではないことも、新鮮味を削いでいるのかもしれない。

そのうえ、北陸新幹線と共用している東京〜高崎では北陸新幹線の「E7系電車」「W7系電車」(EがJR東日本所属、WがJR西日本所属で車輛諸元は同一)が運行されているので、新車「E7系電車」の運行開始は、高崎より北側、新潟までの区間である。

来年度からE7系の運行開始で引退するE4系電車Maxの「全2階建新幹線」
来年度からE7系の運行開始で引退するE4系電車Maxの「全2階建新幹線」

ただ、高崎より北側の上越新幹線沿線にとっては大きなニュースであること変わりはない。なんといっても、最上位クラス「グランクラス」座席の車輛が連結されている。「グランクラス」に座って眺める越後平野の景色はどんなものだろうか。

E4系電車Maxの「全2階建新幹線」が四半世紀の歴史に幕

このE7系電車の運行開始により、置き換えにE4系電車「Max」の引退も同時に発表された。これで、1994年登場のE1系電車Max(2012年9月引退)、その後継型であるE4系電車Maxの「全2階建新幹線」が、四半世紀の活躍を歴史に残し、日本の新幹線から姿を消す。このE4系電車Maxの「全2階建新幹線」の引退は、全2階建新幹線の引退だけでなく、編成の一部が2階建車輛となった東海道・山陽新幹線の100系電車が1985年に登場して以来の「2階建新幹線車輛」の引退を意味する(100系電車は2012年に引退)。

E4系電車「Max」は8輛編成で、2編成を連結した16輛編成で運行されると、1,634席の座席数世界最多クラスを誇る高速鉄道列車となる。2階建新幹線E1系電車・E4系電車「Max」が製造されたのは、東北・上越新幹線で共用している東京〜大宮での運行本数を増やさずに、増える輸送需要に応え、かつ着席サービスを提供するためだといわれている。

8輛編成のE4系電車「Max」で、10輛編成の「E2系電車」とほぼ同じ座席数を維持して、山形新幹線「つばさ」と併結してもホームの長さに収まることからも、「Max」は重宝された。ただ、一部の車輛にある車端部の平屋部分の座席(フラットシート)以外は、車内で階段を登り下りしなければならず、急速に普及したキャリーバッグやベビーカーを持ち込むと、「よいしょっと」持ち上げながらの登り下りで、バリアフリーの面では現代にマッチしなくなっていた。

それでも、E4系電車「Max」は、首都圏の新幹線通勤・通学輸送だけでなく、お盆や年末年始の多客期には、その輸送力から重宝されている。筆者は、ことし2月の土曜日の朝に東京発ガーラ湯沢行「Maxたにがわ」(8輛編成)に乗ったが、指定席車の通路まで、スノーリゾート客が立ち、乗り込むのに時間がかかり、発車が遅れてしまうほどだった。やはり、新幹線は立って乗る乗り物ではなく、座って乗る乗り物である。自由席の新幹線特急料金は座ろうが立って乗ろうが同じ料金であるから、座ることが前提である(通勤ラッシュもそうだが)。

E4系電車「Max」から「E7系電車」への置き換に見え隠れする上越新幹線が置かれた立場

さて、このE4系電車「Max」から「E7系電車」への置き換えは、上越新幹線が置かれた立場を示しているとも思う。それは、上越新幹線の輸送力を減らす可能性が高いということである。4日にJR東日本が発表した内容から以下のように抜粋する。

2020年度末までにE4系新幹線車両は、すべてE7系新幹線車両に置き換わります。

これにより、上越新幹線はE7系及びE2系新幹線車両での運用になります。

 つまり、現在、上越新幹線で運用されているE4系電車「Max」(8輛編成)を全てE7系電車(12輛編成)11編成132輛に置き換えると、読み取れる。この読み取りの通りならば、現在、上越新幹線で運用されているE4系電車「Max」は23編成184輛なので、184輛が132輛に置き換わるということである。車輛数だけでも44輛、割合にして28.3%の減少だが、座席数ではもっと減少の幅を大きくなる。

  E4系電車「Max」
23編成
E7系電車
11編成
グランクラス なし 198席(18席)
グリーン席 1,242席(54席) 693席(63席)
普通席 17,549席(763席) 9,273席(843席)
合計 18,791席(817席) 10,164席(924席)

※JR東日本発表などを基に作成、カッコ内は1編成あたりの座席数

上表は、E4系電車「Max」23編成分の座席数と「E7系電車」11編成分の座席数を比較した表である。上越新幹線で運用される「E2系電車」の編成数が変わらないなど周辺の条件が変わらない、E4系電車「Max」全23編成が「E7系電車」11編成に置き換わるという単純な計算だが、18,791席が10,164席に減る計算になる。減少率は45.9%にのぼる。つまり、4割以上も座席数が減る、輸送力が減ることになる。上越新幹線の運行会社であるJR東日本は、これだけ輸送力を減らしても、十分に輸送できると見込んだのだろうか。さすがに、東北新幹線から「E2系電車」を転属させたり、北陸新幹線向けのE7系電車を上越新幹線とまたいで共通に運用させたりするのが順当だろうか。

2年前の2015年3月14日、北陸新幹線が開業し、越後湯沢乗り換えだった首都圏〜富山・石川の鉄道利用者が北陸新幹線に流れてしまい、「上越新幹線減便問題」がクローズアップされた。北陸新幹線開業時は東京〜新潟の「とき」「Maxとき」は1往復減で大きく減便されなかった。首都圏〜新潟県・庄内の輸送需要や利便性確保からすれば、大きく運行本数を減らせないと、当時は判断されたのだろう。

ただ、今回の発表に潜んでいると考えられる「座席数の減少」、すなわち「輸送力の減少」は、上越新幹線にとり、北陸新幹線開業時以上の衝撃を与える可能性がある。「E7系電車」が運行を始める2018年度からE4系電車「Max」が引退する2020年度までの3ヶ年かけて、ゆっくりと輸送力が減らされていくのである。

輸送力が減ることを上越新幹線の運行会社に抗っても何も始まらないだろうし、何も得られないだろう。事業(ビジネス)として営む民間の鉄道会社の経営判断である。筆者は、それ(抗う)よりもやることが多いと思っている。さすがに4割以上の減少ではないとしても、座席数が減少していくのは間違いないだろう。

E4系電車「Max」には電源コンセントがない

東海道・山陽新幹線のN700系電車、東北・北海道新幹線のE5系電車・H5系電車では、普通席でも窓側と客室端の座席に電源コンセントがあり、E2系電車でも一部の編成に電源コンセントがあるが、E4系電車「Max」では電源コンセントがまったくない。つまり、上越新幹線ではほとんど充電できる環境はない。充電できる車輛が来たらラッキーなのが、今の上越新幹線である。

しかし、E7系電車では普通席でも「全座席に電源コンセント」が用意される。これで、12輛編成で「グランクラス」マークがある「とき」ならば、移動中(乗車中)のスマホ充電もできる環境に一気に変わる。これほど、スマートフォンが欠かせない生活となった現代、移動中に充電できるサービスは当たり前になったのかもしれない。ただし、上毛高原〜長岡のトンネル区間での電波不感区間は、しばらく解消されそうにない。

ここまで書いたが、E4系電車「Max」から「E7系電車」への全車置き換えの発表を読み取りすぎかもしれない。

心配が杞憂に終わるだろうか。それとも…。

(文・藤井大輔)


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