旧栃尾市出身の美術家でエッセイスト、コレクターでも知られる元中学校教諭の佐藤秀治さん(70)=長岡市滝の下町=が、フリーペーパーに連載している骨董(こっとう)紹介コラム「時の忘れもの」で紹介したコレクションを一堂に集めた企画展「時の忘れものSelection展」が、22日から5月14日まで長岡市栃尾文化センターで開かれている。
佐藤さんは、長岡市を中心に発行されている月刊のフリーペーパー『マイ・スキップ』で、コラムを担当。最新号の5月号で連載109回を数えており、100回連続突破記念の現物展として最初で最後の企画展として開かれている。
毎回、テーマを決めて執筆しており、これまでのコラムで紹介した54回分のコラムで紹介した珍品、がらくた、廃物欠損、掘り出し物、ジャンク品、昭和レトロ、大正浪漫、ブロマイドなどを会場ぎっしり展示している。
蓄音機のレコードのパッケージ、全国の紙芝居師に賃貸された手描きの紙芝居「風雲城」、明治から大正の絵はがきの包みの“たとう”、手の平にすっぽり収まるスパイカメラ、カチカチと音がするブリキのおもちゃ「セミカチ」、コレクターも多い電線の絶縁体に使われた陶器製の「碍子(がいし)」、タケを細くした“ひご”でつくるゴム動力の模型飛行機、1977年に自死した見附市出身のシンガーソングライター富所正一さんのアルバム。40歳代以上なら声を上げてしまうほど懐かしく、子どものとき以来に思いだすような物に必ずめぐり会える。
“赤紙”と呼ばれた昭和7年(1932)の召集令状や軍人恩給証書の戦時中の記録。地元栃尾でことし廃業したばかりの「しまたい豆富店」の看板をはじめ、かつて栃尾にあった料理屋エビトラのおかもち、池田屋のやかん、みそやしょうゆを製造した三崎屋の小皿などもあり、地元の人たちにとっては、それぞれのふるさとのイメージがよみがえる。
三条市にちなんだものでは、六角凧と大工道具の“墨壺(すみつぼ)”がある。三条の六角凧については、コラムのなかで「『六角凧』発祥の地三条は『たこ』と呼ばず『いか』といい」と紹介し、武者絵が描かれた三条六角凧を展示する。
墨壺についてはコラムで、明治期に三条の墨壺は国内生産量の8割に達し「三条地域では、『栗山流』『竹之内流』『栗林流』と呼ばれる三流派ができ、生産地として全国に名が広がったとされています」と書き、「三条において石川雲蝶が越後入りした時期と重なり合うことから、袖すり合ったのではと想像を膨らませる面白いことです」とも。「坪直」、「長雲」、「坪浩作」などとある墨壺を展示している。
「昔の思い入れがあるようなもの、なくなりそうなもの、男、女、中間、古い物、新しい物、広い振り幅で集めてきた」と佐藤さん。美術的、歴史的な価値がはっきりしているものより、日常の生活のなかにあるものを収集してきた。
今はネットでも収集するようになり、さらにコレクションの幅が広がっている。「古い物にはこういう歴史があると、物自体が語ってくれる物を紹介している」。
今回の企画展は、コラムを読んだいろんな人から現物を見たいとの声があって準備した。年配の人の来場が多く、「60歳代以上の人は質問が多過ぎて。みんな懐かしいと言ってくれる」と佐藤さんは喜び、「コラムは200回でも永遠に書いていける」。佐藤さんが元気なうちはコラムが続く。
企画展は毎日午前9時から午後5時まで。5月14日(日)は、午後2時から佐藤さんによる記念トークも行われる。問い合わせは主催の長岡市栃尾文化センター(電話:0258-52-2020)へ。